2016 Fiscal Year Annual Research Report
the research on the role of administrative litigation in guaranteeing of a local government's autonomy right of self-government
Project/Area Number |
26380029
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
長内 祐樹 金沢大学, 法学系, 准教授 (00579617)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | イギリス地方自治法 / 行政事件訴訟 / 法律上の争訟 / 自治権 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度も、昨年度までに引き続き、早稲田行政法研究会、北陸公法判例研究会、日本地方自治学会、及び日本公法学会等に出席し、広く行政訴訟、地方自治制度についての情報収集を行うとともに、イギリス行政法研究会に出席することで、イギリス公法にかかわる知見を広げることができた。 また、今年度は、本研究の最終年度ということもあり、上述のような情報収集に加えて、これまでの収集した情報を整理するとともに、本研究の主題に即したとりまとめに着手した。 その結果、日本における自治権に関する議論を探ると、これまで日本では、憲法92条以下の条文から各自治体の自治権を導き出す努力が憲法論としてなされてきたものの、未だ制度的保障論の壁を超えることができていない。それに加えて、行政権の主体としての自治体の自主(自治)行政権の権利性についてこれを否定する司法の傾向があり、理念的にも、また実体的にも自治体の自主行政権の権利性は認められていないことが明らかとなった。 他方で、イギリスの場合、そもそも地方自治制度に関する制度的保障すらは憲法上存在せず、ましてや自治体の自治権に関する保障も憲法上存在しない。それにもかかわらず、自治体が原告として行政訴訟を提起するケースは少なくなく、またその際に、訴訟要件の段階で問題となるのはせいぜい「十分な利益」(=日本の法律上保護された利益)の有無程度である。 このように、地方自治に関して憲法上で規定が存在する日本では自治体の自治権は権利性の観点からするとその存否すら疑問視されうるのに対して、イギリスは自治体の自治行政権は一般的に司法救済の対象となるのが原則(そこでの司法の意識・無意識は別として)という非常に皮肉な現実を看取することができた。
|