2014 Fiscal Year Research-status Report
憎悪表現(ヘイトスピーチ)の規制をめぐる諸問題についての比較憲法学的考察
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26380030
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
小谷 順子 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (40359972)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ヘイトスピーチ / 表現の自由 / 比較憲法 / 憲法 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、憎悪表現(ヘイト・スピーチ)の規制をめぐる憲法上の問題のうち、人権法による規制をめぐる問題点を中心に検討を行ったうえで、アメリカ及びカナダにおける規制をめぐる議論を論文としてまとめて公刊した。具体的には、金尚均編『ヘイト・スピーチの法的研究』(法律文化社)において2つの項目(「第5章 表現の自由の限界」及び「第6章 言論規制消極論の意義と課題」))を執筆して公刊したほか、規制消極論に焦点を当てた単著論文として、「憎悪表現(ヘイト・スピーチ)規制消極論とその背景」(法と民主主義490号収録)も公刊した。 さらに、憎悪思想に基づく「表現」の発信に対する規制をめぐる問題から一歩先に進み、憎悪思想に基づく「暴力行為」に従事するテロ組織に対する規制をめぐる憲法問題にも焦点を当てて検討を行った。具体的には、アメリカ連邦法に基づくテロ組織規制と表現の自由の保障との整合性を検証したうえで、書籍収録単著論文(「外国テロ組織(Foreign Terrorist Organization)に対する実質的支援を禁じる連邦法の合憲性をめぐるアメリカ合衆国連邦最高裁判決」大沢秀介・小山剛編『フラット化社会における自由と安全』(尚学社))として公刊した。諸外国にみられるテロ組織は憎悪思想を掲げる集団という側面も有しており、こうした集団に対する法規制に含まれる憲法上の問題点を検証することは、今後の日本のテロ対策法制のあり方を検討するうえでも有意義である。 また、10月に、米国ジョージタウン大学ローセンターにおいて、「Hate Speech Regulation in Japan」と題する英語の講演を行い、日本における憎悪表現規制をめぐる議論の紹介を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カナダの人権法についての単独論文の公刊には至らなかったが、人権法を含む諸規制の問題点についての論文(書籍の一節も含む)を複数公刊することができたほか、憎悪思想に基づくテロ組織の規制をめぐる表現の自由の問題についても取り組むことができ、さらに、アメリカの大学において日本の憎悪表現規制に関する議論状況を英語で発表することができたことから、本研究は概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、当初の計画どおり、憎悪表現規制をめぐる「lawfare(法的闘争)」と呼ばれる事象をめぐる研究を行う。この事象は、各国で発表されるイスラム批判の出版物に対して、イスラム系の国際テロ組織が名誉毀損やヘイトスピーチの規制法に基づいて損害賠償訴訟を提起し、これに勝訴して賠償金を勝ち取ることを通して活動資金の獲得を図っていると言われるものである。今年度は、lawfareの現状を調査したうえで、当該概念と表現の自由の保障との関係をめぐる議論を検証・分析する予定である。
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Causes of Carryover |
購入予定であった書籍等の資料の多くが訪問先の大学のデータベース上で無料でアクセス可能であったため、書籍の購入金額が予定よりも低く収まった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
書籍を購入する予定である。
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Research Products
(3 results)