2015 Fiscal Year Research-status Report
憎悪表現(ヘイトスピーチ)の規制をめぐる諸問題についての比較憲法学的考察
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26380030
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
小谷 順子 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (40359972)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 憎悪表現 / ヘイトスピーチ / ヘイト・スピーチ / 表現の自由 / 自由と安全 / テロ対策 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、憎悪表現(ヘイト・スピーチ)の規制をめぐる憲法上の問題のうち、憎悪表現発信者による司法制度ないし訴訟制度の活用という点に着目し、アメリカ国内で現在問題となっているところの、地方公共団体の運営する地下鉄・バス等の公共交通機関における憎悪表現広告の規制をめぐる一連の訴訟の動向の分析を行い、その成果を、「公共交通機関における政治的憎悪表現広告の規制ーーアメリカ合衆国憲法修正1条「表現の自由」と「Lawfare?」」という題目の下、慶應義塾大学で開催された「市民生活の自由と安全」研究会にて報告した。当該問題は、公権力によって表現活動の場として提供されたフォーラムにおける表現内容規制の問題である点、公共交通の安全確保に関わる問題である点、さらに、訴訟の提起それ自体が表現活動という側面を有している点において、今後の憎悪表現規制の可否・是非の議論に対して有益な示唆を与えることが分かった。さらに、当該年度には、表現内容規制に関する判例分析の執筆(判例集の一項目)も行った。 さらに、当該年度には、憎悪表現規制の比較対象国を当初の予定のアメリカ及びカナダから拡大し、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、フランス、及びドイツを含む先進諸国についての法規制の現状の調査も行った。このように参照対象国を広げることにより、今後のより効果的な比較憲法研究の基盤を整えることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
憎悪表現発信者による訴訟制度の活用に関する研究分析については、研究会等において報告を行った。本研究の成果は、平成27年度中には論文刊行には至らなかったが、今後の刊行に向けて、平成28年度中に論文を完成させる予定である。さらに、平成27年度には、これまでの研究対象であるアメリカとカナダに加えて、他の主要国の法規制の状況についても調査をすることができたことから、本研究は概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、当初の計画どおり、これまでに実施した諸外国の調査研究をさらに深めたうえで、諸外国の状況が日本に対していかなる示唆を与えうるのかを検証する。また、平成28年度の通常国会(第190回)において、憎悪表現規制を含む法案についての具体的な審議が行われていることをふまえ、今後は、憎悪表現規制の立法化の動向も注視しつつ研究を行う予定である。
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Research Products
(2 results)