2014 Fiscal Year Research-status Report
租税システムの情報収集機能に基づいた公的・私的給付統合に関する研究
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26380031
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
高橋 祐介 名古屋大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (50304291)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 生活保障 / 相続・贈与税 / 租税回避 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、生活(の質)保障の基準として、個々人の「持続可能な消費能力」に焦点を当て、このような消費能力を総合的に把握するために、所得(非課税所得含む)のみならず、生活の基盤たる金融資産や不動産等一定の資産をも基準に取り込み、必要な情報収集を行いつつ、消費能力保障とそれを前提とする租税賦課徴収・公的及び私的給付を行うための包括的課税・給付モデルを探るものである。 本年度は、生活(の質)保障の観点から、持続可能な消費能力と現在の課税ベース及び給付ベースの関係を検討するため、人的・物的資本や一時的所得、特に人的・物的資本欠損を穴埋めする損害賠償に対する課税のあり方や一時的所得としての相続・贈与の捕捉と公的給付の関係などに焦点を当て、また(本来の計画では27年度以降に検討する予定の)源泉徴収及びマイナンバー制度の問題点についても、予備的な若干の検討を行った。生活の質保障の観点から損害賠償や相続・贈与は大きな意味を持っているが、公的給付を行う上で、また私的給付に対する課税を考える上で考慮されてはおらず、相対的に損害賠償や相続・贈与によって金銭等を得られる者の生活保障が過剰となるとともに、損害賠償や相続・贈与を得られない者が、生活の質保障の観点からは相対的に不利益を被る。また、事前のプランニングにより大きく税負担の軽減を図ることのできる現行の相続・贈与税は、特に国際的租税回避に対して脆弱な側面があり、上記の生活の質保障のアンバランスさを拡大しており、適切な対処が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の当初計画に従い、生活(の質)保障の観点から、物的・人的資本や一時的所得の課税のあり方などに焦点を絞り研究を行い、税法の観点から消費者法に対して提言を行う、相続税・贈与税の国際的租税回避に対する現状分析と対処法の提言など、研究の進展がみられた。また、次年度以降に行う源泉徴収やマイナンバー制度などについての予備的考察も進めているところから、おおむね計画通りに順調に推移しているものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に従い、源泉徴収やマイナンバー制度の情報収集機能の影響について検討を行う。当初計画ではあまり意識されていなかったプライバシーないし情報保護の観点からの検討も特に重要であり、情報収集機能とプライバシー保護の調和を意識しつつ、研究を進めたい。
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Causes of Carryover |
比較的高額な外国語文献の到着時期の遅れと、同文献の為替変動を見越した保守的な支出による。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度開始直後に、遅れていた外国語文献が到着し、ほぼ当初通りの支出を行う見込みである。ただし、将来的な為替変動は見通しがたく、1ドル130円台まで円が下落する可能性を念頭に置きつつ、支出する予定である。
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Research Products
(3 results)