2015 Fiscal Year Research-status Report
租税システムの情報収集機能に基づいた公的・私的給付統合に関する研究
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26380031
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
高橋 祐介 名古屋大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (50304291)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 生活保障 / 相続・贈与税 / 租税回避 / マイナンバー / 情報保護 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、生活(の質)保障の基準として、個々人の「持続可能な消費能力」に焦点を当て、このような消費能力を総合的に把握するために、所得(非課税所得含む)のみならず、生活の基盤たる金融資産や不動産等一定の資産をも基準に取り込み、必要な情報収集を行いつつ、消費能力保障とそれを前提とする租税賦課徴収・公的及び私的給付を行うための包括的課税・給付モデルを探るものである。 本年度は、税や社会保障における情報収集機能、特に源泉徴収制度及び確定申告のあり方について見直し、本年度中(平成28年1月)に本格稼働の始まったマイナンバー制度の影響をも踏まえた納税者の個人情報保護のあり方やいわゆる納税環境の整備等について検討を行った。(1)情報保護につき、近年のプライバシーに関する法理の進展(いわゆる構造的展開)を受けた情報の流れ(取得→加工・利用→提供)に沿った保護方法の必要性と第三者的機関(現在の個人情報保護委員会)の機能拡充による情報監査が重要であること、マイナンバー制度自体がむしろ自己情報を十分に利用提示できない情報弱者による自己情報コントロールを十全なものとなし得る可能性があること、マイナンバー制度以前に情報の濫用の可能性があり、それが現在のところ全く議論されていないこと、(2)例えば国外居住親族に係る扶養控除等の添付等義務化といった情報の入手に関する法改正以前に、そのような国外居住親族に対して扶養控除を与えるべきか(児童手当は原則として国外居住児童には支給されないことに注意)を議論すべきこと、(3)いわゆる国外移住による物的資本移転と相続・贈与税課税回避に対し、現行法では国籍による課税に対抗しようとしているが、日本国外居住の全日本人を追跡し情報入手を継続し続けなければならないという非現実的な情報入手が要求され妥当ではない、といった結論を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画に従い、税や社会保障における情報収集機能、特に源泉徴収制度及び確定申告のあり方につき検討を行い、特に納税者の秘密の保護に関しては相当に深く検討を行いえた。また相続税・贈与税をめぐる国際的租税回避に関する前年度の研究成果も公表しており、研究課題はおおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に従い、公的・私的年金や生命保険、帰属所得、人的資本課税を念頭に置きつつ、生活(の質)を保障するための具体的な課税・給付制度の構築を行う予定である。特に、生活再建部面における民事法と税法の競合、さらに制度複雑化に対応するための専門職(弁護士、税理士、社労士など)のあり方に関する視点も取り込んで、研究を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
外国図書の高騰及び為替変動を見込んだ買控えと、他の用務・会議・研究会とのバッティングによる出張(特に東京出張)の減少が原因である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当年度は他の出張計画を減らし、本研究課題のための出張回数が多くなる見込みである。外国図書の高騰及び為替変動については、当年度にも注意が必要であるが、計画的かつ慎重な図書購入執行を行う予定である。
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Research Products
(5 results)