2015 Fiscal Year Research-status Report
墓地提供という公役務と信教の自由――公役務を通じた自由実現モデルの考察
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26380039
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
田近 肇 岡山大学, 法務研究科, 教授 (20362949)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片桐 直人 近畿大学, 法学部, 准教授 (40452312)
重本 達哉 大阪市立大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (60584042)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 墓地埋葬法 / 信教の自由 / 葬送の自由 / 宗教的多元社会 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、前年度に引き続き、研究の基礎作業として、墓地埋葬法制の比較法的検討を行った。 具体的には、平成27年6月6日及び9月3日に研究会を行い、訪問先及び質問事項の打合せを行ったうえで、9月20日から27日までにかけて、オーストリア及びドイツに赴き、現地調査を行った。すなわち、(1) オーストリアの墓地埋葬法制に関して業績のある行政官から聞き取り調査を行い、(2) ウィーン市営墓地の維持・管理を行っているウィーン市墓地公社を訪問して聞き取り調査を行い、また、ウィーン中央墓地を見学し、(3) ドイツにおいて定期的に墓地埋葬法に関して研究会を開催しているシュパイア行政大学院を訪問して、研究者から聞き取り調査を行い、(4) フランクフルト市緑地局墓地担当官から聞き取り調査を行うとともに、フランクフルト市営墓地を見学した。この現地調査により、彼我の葬送慣習の違いに起因する疑問点を解消することができ、オーストリア及びドイツの墓地埋葬法制の基本的な考え方を確認することができた。 また、11月20日には、ロシアの事情に詳しい研究者を招いて研究会を行い、ロシアの墓地・埋葬の事情について知見の提供を受けた。 さらに、わが国の墓地行政の実情を知るため、9月3日及び11月20日に、京都市役所保健福祉局及び浜松市健康福祉部生活衛生課・市民部市民生活課を訪問して、聞き取り調査を行い、地方公共団体の墓地行政の現状と、直面している課題とについて、情報の提供を受けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画では、この研究全体の基礎的な作業である諸外国の墓地埋葬法制に係る法令、裁判例、行政実務等の基礎的な資料の収集と分析は、前年度中に終える予定でいた。しかし、わが国と諸外国との間の葬送慣習の違いが想像以上に大きく、基礎資料の収集・翻訳を進めていくうえで十分に理解することのできなかった点が少なくなかったため、前年度に引き続き、基礎的な作業の進行が遅れ気味である。 しかし、収集・分析した資料の翻訳等を徐々に公表しつつあり、また、国内及び海外の現地調査を通じて、わが国の墓地行政の現状及び諸外国の墓地埋葬法制の実情を知ることができたことから、次年度以降の研究成果の公表に向けた準備はできつつある。 以上が、現在までの達成度について「(3)やや遅れている」とした理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
諸外国の関連法令等の基礎資料の収集・分析・翻訳は、すでにかなりの程度まで進んでおり、今後、これを研究成果として公表する作業を加速することが必要である。 また、平成28年の11月には宗教法学会の秋季学会の場を借りて、本研究の研究成果を公表するシンポジウムを開催することについて、同学会の了承を得ている。それゆえ、そのシンポジウムに向けて、単なる資料の翻訳を越えて、諸外国で墓地の提供が公役務と理解されていることが墓地埋葬法制においてどのような意味を有しているのか、この公役務の遂行において信教の自由ないし葬送の自由(また、国によっては政教分離原則)という憲法上の自由・原則がどのように考慮されているのかを理論的に解明するという作業に精力的に取り組む必要がある。
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Causes of Carryover |
当初、平成27年度中に3回目の国内現地調査と4回目の研究会とを予定していたところ、研究代表者が所属研究機関を変更することとなったこと等の理由により、スケジュールを組むことができず、予定の通りに実施することができなかったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
この次年度使用額については、平成28年度に改めて国内現地調査及び研究会のスケジュールを組みなおし、平成28年度の使用額と合わせて使用することとしたい。
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Research Products
(3 results)