2014 Fiscal Year Research-status Report
都市計画と公共交通計画の融合を通じた集約型都市計画法制の比較実証研究
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26380045
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
大橋 洋一 学習院大学, 法務研究科, 教授 (10192519)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | コンパクトシティ / 都市計画 / 公共交通計画 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、都市交通に着目し、コンパクトシティを実現可能とする都市法制のあり方を探求するものであるが、本年度においては、以下に記すように、日本法において自治体や事業者に豊富にヒアリングをする機会に恵まれた。そこで、平成27年度に予定していた研究計画を一部前倒しして実施した。他方、本年度に予定していた海外調査は、平成27年6月に実施する予定であり、既にコンスタンツ大学、ハイデルベルク大学、オスナブリュック大学の関係研究者の承認も取得済みである。 本年度においては、1つには、国土交通省社会資本整備審議会都市計画部会に参加すると共に、「新たな時代の都市マネジメント小委員会」に参加して、制度設計にかかる議論を行った。並行して、平成26年6月9日から平成27年3月18日まで、「今後の市街地整備事業のあり方に関する検討会」に参画し、とりわけ、コンパクトシティの実現に向けて第一線で活動している地方公共団体や民間事業者の取り組みをヒアリングする機会に恵まれた。施設建設に重点が置かれた時代から、建設後の管理、マネジメントを重視する方向で視点が移行していること、ストックの継続的利用を重視した公民協力と新しい法技術、マネジメント組織形態が問われていることを確認することができた。 上記の政府関係の審議会等に参画して得られた資料やヒアリング結果を素材として、本研究の観点から、丁寧にまとめ直す作業を行った。都市再生機構、前橋市、静岡市、三菱地所、金沢市、門真市、東京都、大和ハウス、東京急行電鉄株式会社、大成建設といった第一線のまちづくりの民間事業者や地方公共団体が抱えている具体的な問題を抽出して、法理論の観点から重要と思われる課題を発見し、確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述の実態分析を通じて、現在の日本において、実際に生起している実務上の課題を具体的に把握することができた。具体的には、第一に、高容積率型の計画から低容積率型の計画への変更により、事業採算性を確保しようとする「身の丈主義」とも称すべき動きが存在した。大きな施設を設置した結果、以後にその維持で地方公共団体や事業者が苦労することがないよう、財政規律を持って事業を進める視点が登場していることを確認できた。第二に、都市機能更新の観点では、整備済みエリアにおける再度の更新の課題が登場していること、それを促進するために非木造系の建物の除却制度との連携が課題であることを確認できた。第三に、合意形成を円滑に進めるために、土地所有者等の意向に沿ったオーダーメードの視点、法定のタイプに限定されない再開発手法に対する需要を発見することができた。地上権設定型、非設定型、全員合意型といった法定の開発手法に加えて柔軟な手法に対する需要が存在するのである。第四に、用地取得が困難である状況下では、公有地等を種地として利用して連鎖型の事業展開を図る手法が有用であることに関心を持った。こうした段階的施行はすでに東京の丸の内地区で民間事業者が中心に成功を収めているが、こうした手法を東京以外の中核都市でも展開することが可能であるのかが問われている。あわせて、飛び施行換地、大街区化が課題として明らかになった。第四に、交通結節点で居住の集積を図る上では、立体的な土地利用、占有許可制度の柔軟化等に課題がある点も確認できた。この点では、立体道路制度を参考に、新たな制度構築が求められていることが明らかとなった。以上のように、日本法の抱える諸問題を抽出することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度に解明できた実務上の課題に関しては、わが国で知られていない論点等が多いことから、論文の形で27年度に公表することを考えている。公表先として、複数の先生の記念論文集ないしは自治研究誌に掲載の予定である。また、こうした実態調査を制度形成に結びつけるために、再開発や市街地整備などに関する実務系文書、制度立案関係者の解説書などを精力的に収集したいこうした研究を進めることで、学界と実務を架橋できる研究を進めたい。さらに、比較法的な分析を進めるために、ドイツの都市法に詳しい研究者と積極的に意見交換したい。その具体的な計画内容は以下に記すとおりである。このように日独比較研究や実態研究を進め、成果を都市計画法等の改正に反映し、社会還元することを目的とする。
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