2014 Fiscal Year Research-status Report
新しい信託の活用と信託を利用した租税回避防止策の研究
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26380046
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Research Institution | Takushoku University |
Principal Investigator |
阿部 雪子 拓殖大学, 商学部, 教授 (50299814)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 特定受益証券発行信託 / 土地信託 / 空中権(Air Rights) / 開発権(TDR) / 連担建築物設計制度 / 地役権設定の対価 / 譲渡とみなされる行為 |
Outline of Annual Research Achievements |
信託法(平成18年法律108号)の改正により、新たな信託が創設され、信託の活用の期待が高まっている。これを受けて平成19年度税制改正では信託税制の改正が行われたが、信託を濫用した租税回避の対応策等の課題も残されている。このような問題意識のもとに、本年度はまず、新信託の活用を促進するための税制をいかに構築すべきであるのかという観点から信託を利用した場合の空中権取引の課税について検討した。新信託法の改正にともなう新しい信託の活用モデルを構築するための研究として、土地信託方式に着目した。これまで土地信託は、都市再開発を目的とし、複数委託者かつ受益者による土地の高度利用の方式として期待されていたが、信託法上のみならず信託税制上解決しなければならない多くの課題が指摘されてきた。そこで、新信託法に導入された特定受益証券発行信託が空中権取引に活用できうるかどうか、その可能性について探究した。空中権取引にかる課税につき、アメリカで展開された空中権(Air Rights)、TDR(移転できる開発権)の意義とその基礎にある考え方をアメリカの裁判例等を基に検討し、さらにわが国において空中権の機能を有する私法上の権利及び公法上の制度について考察を進めた。 次いで、わが国において空中権の設定の対価が問われた裁判例を素材として、空中権の法的性質とその所得区分の問題等について検討を行った。結論として、信託を活用した空中権取引を促進するためには、税制上、解決すべき課題があることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、関西大学租税法研究会、及び国税庁・税務大学校の税務研究会等の報告を基軸に本研究を進める中で、租税法研究者、学識者、立法担当者、税務行政執行者に多くのご指導・ご助言を賜ることができた。また米国での資料収集、海外調査研究も順調に行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
二年度目は引き続き、海外の準拠法に基づく信託の活用とその課税の問題について考察を進める予定である。信託も他の事業体と同様、租税法上、信託そのものが納税義務者となるかどうかの問題がある。近年、国外の準拠法に基づいて設立された事業体がわが国の租税法上、法人に該当するかどうかの問題が生じている。これに対応して、現在訴訟中の裁判例を素材にして、そこで議論されている問題点を整理し、信託法上及び信託税制上、解決すべき課題について検討を行う予定である。信託を活用する一方で、信託を濫用した租税回避行為をいかに防止すべきであるのかという問題につき、解釈論ならびに立法論について考察を進めていく予定である。
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Research Products
(6 results)