2014 Fiscal Year Research-status Report
「人間の尊厳」の日本国憲法への体系的導入―人間の共通性に基づく人権の新たな解釈論
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26380047
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
押久保 倫夫 東海大学, 法学部, 教授 (30279096)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 人間の尊厳 / 絶対性 / 日本国憲法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、本研究の中心概念であるドイツ連邦共和国基本法1条の「人間の尊厳」の理解を深め、それに基づく人権解釈の指針を探求した。その一環として、「憲法問題研究会」にて「それでも人間の尊厳は絶対である」と題する報告を行った。 そこでは、「人間の尊厳」の絶対性の動揺(「人間の尊厳」の比較衡量可能性の主張)が、比較的近年ドイツで、そしてその影響を受けて日本でも発生していることから、その是非の考察を行った。まず、問題となる場面として、「生命倫理」「救助のための拷問」「転向事態(Regnade Fall)」といった領域を取り上げ、それらの領域での、学説の対立状況、及び判例の問題点を検討した。そして、人間の尊厳の絶対性の動揺をもたらしている、人間の尊厳同士の規範衝突とされている事例の多くは、人間の尊厳と生命権を明確に区別する立場から、他の枠組みで捉えるべきことを明らかにした。しかし稀な事例ではあるが、人間の尊厳同士の規範衝突が存在することもあることを示し、その場合の解釈可能性について考察した。さらに、「人間の尊厳」の絶対性が維持されてきた法社会学的理由、加えて当該概念の歴史的意義を考察することにより、結論的にはドイツ連邦共和国基本法1条の「人間の尊厳」の絶対性を維持すべきこと、日本国憲法の解釈学にこの「人間の尊厳」の概念を導入する場合は、法文上及び現在の憲法状況からして、なおさらそうであることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、「研究実績の概要」で記したように、本研究の中心概念であるドイツ連邦共和国基本法1条の「人間の尊厳」の理解を深める研究を主として行った。これは本研究の目的である、「人間の尊厳」を日本国憲法の解釈に、体系的かつ実践的に取り入れる重要な前提作業ではあるが、当該概念を基礎とした、日本国憲法における新たな解釈論を具体的に提示するには至っていないのが現状である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、「人間の尊厳」の理解を深めた本研究を基盤の一つとして、日本国憲法における、人間の共通性に基づく人権の新たな解釈論を具体的に構想していきたい。
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