2016 Fiscal Year Research-status Report
デジタル化社会における公平な課税―「フェア・シェア」の探求
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26380048
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
西山 由美 明治学院大学, 経済学部, 教授 (20296221)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柴 由花 常葉大学, 法学部, 教授 (20383193)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 現代的消費税 / 仕入税額控除 / インボイス / 自動的情報交換 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、国内で組織した研究会(日本税務研究センター・「消費税の研究」特別研究会)を基盤に、フェアな消費税および現代的消費税の在り方を検討した。その成果は、下記のとおりである。 ①「消費税の税率構造とインボイス―伝統的消費税と現代的消費税からの示唆」税理59巻5号1-9頁(2016年4月) ②「仕入税額控除」公益財団法人日本税務研究センター編『消費税の研究』465-514頁(2017年1月) また、研究代表者・西山および研究分担者・柴は、中央大学法学会・法学新法において、下記の論文を公表した。③西山由美「消費課税におけるインボイスの機能と課題―EU域内の共通ルールと欧州司法裁判所判例を素材として―」法学新法123巻11・12号119-150頁(2017年3月) ④柴由花「非居住者・多国籍企業の情報 : 自動的情報交換に関連するEUルールの模索」法学新報123巻11・12号357-388頁(2017年3月) 研究報告としては、大阪経済大学で研究代表者・西山および研究分担者・柴は、下記の高騰報告を行った。⑤西山由美「消費税とフェアシェア」大阪経済大学:ビジネス法コース・税法務プログラム(2016年8月13日) ⑥柴由花「中小企業の事業承継と税~不動産を中心として~」大阪経済大学:経営・ビジネス法情報センター、経営学部、大学院経営学研究科共催経営と法セミナー(2016年8月20日) 上記の業績の中でも、とくに公刊された論文①~④は、2016年に耳目を集めたパナマ文書やBEPS(税源浸食・利益移転)の問題を踏まえ、真にフェアな課税を実現するための取引情報・税務情報の透明化に向けた制度設計の在り方に着目している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
最終年度(2016年度)には、「公平課税」の権威であるドイツの教授を招聘し、「課税におけるフェアネス」をテーマにセミナーを開催する予定であったが、同教授の体調不良による来日断念により、計画変更をせざるをえなかった。また研究代表者・西山が、同僚の急病に伴って急きょ、平成28年度4月より大学院(法と経営学研究科)主任を務めることになり、完成年度の組織運営に忙殺され、同年度中の新たなセミナーの開催計画を立てることができず、本科研費課題を1年延長せざるをえなくなった。 しかしながら、海外の研究者との共同研究に代え、国内の研究者と研究会(「消費税の研究」特別研究会)を組織し、法学、経済学、財政学の専門家とともに「フェアかつモダンな消費税」の研究を行った。研究代表者・西山は、この研究会に副部会長としてかかわり、研究会の成果を580頁に及ぶ報告書(「消費税の研究」)としてまとめることができた。 以上により、当初計画の海外研究者とのセミナー開催は、2017年度に持ち越されたものの、国内研究者との共同研究を通して本科研費課題に即した研究成果を出すことができたことから、進捗状況としては「やや遅れている」に相当するものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
主に消費課税におけるフェアネスの総括を行う。すなわち、制度の複雑化に伴い脱税などの弊害が生じている伝統的消費税(EU域内付加価値税)の問題点を精査し、フェアな消費課税を目指したオセアニア地域(オーストラリアおよびニュージーランド)の物品・サービス税(GST)に注目し、「現代的消費税」、さらには「ポスト・モダン消費税」の諸要件を探求する。 まずは、両国のGST導入の背景に関するRick Krever/David White, GST in Retrospect and Prospect(2007)およびオーストラリアの主要判例に関するRick Krever, Australian Taxation Law Cases (2016)を基本文献として、両国の制度の理解を深める。さらに、これらの文献の著者であるKrever教授(オーストラリア・モナシュ大学)を本科研費にて招へいし、国内の消費税研究者および実務家とセミナーを開催し、欧州型消費税・GST型消費税・日本型消費税の比較検討を行い、よりフェアな消費税の在り方を議論する。なお、Krever教授からは、2017年10月来日の内諾を得ている。
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Causes of Carryover |
本来の最終年であった2016年に、ドイツより本科研費課題の「公平課税」の権威である教授を招へいしてセミナーを開催する予定であったところ、同教授の病気により断念せざるをえなかった。そこで本科研費での研究期間を1年延長し、2017年10月にオーストラリア消費税(GST)の代表的研究者であるRick Krever教授(モナシュ大学)を招へいし、「現代的消費税・ポストモダン消費税」をテーマにセミナーを開催する予定である。 同教授からはすでに招へい受諾の返事を得ており、10月下旬に明治学院大学白金校舎において、参加者20名程度の円卓形式のセミナーを開催する準備に着手している。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主として、上記Krever教授を招へいしてのセミナーに使用する。具体的には、メルボルン・東京間の往復航空運賃として約20万円、宿泊費・滞在経費(東京3泊)として6万円、謝金として3万円、セミナーパネリスト交通費(ただし地方在住者3名分のみ)7万円、セミナー開催費(資料印刷費、会合費、アルバイト代など)17万円、その他雑費2万円を予定している。 また、研究分担者には、セミナー準備のために静岡・東京の往復を複数回してもらうこと、Krever教授のアテンドのサポートもしてもらいことから、配算額として12万円を予定している。
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Research Products
(5 results)