2015 Fiscal Year Research-status Report
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26380049
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
岡田 正則 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (40203997)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 公権力の行使 / 行政処分 / 行政行為 / 行政訴訟 / 行政裁判制度 / 外国法の継受 / 司法制度改革 / ドイツ公法史 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015(平成27)年度の研究では、明治期以降の日本における行政争訟制度の創設と展開の過程に関する検討作業を進めた。行政裁判法・訴願法の立法過程、行政裁判所判決、日本における行政法理論の形成過程、美濃部達吉らによる判例批評と判例理論形成との関係、制度改革案の形成過程とその挫折、戦後の制度設計および行政法理論に対するこれらの影響などを分析することを課題とした。この内容は、後述のマックスプランク欧州法史研究所における研究報告「19世紀末の日本における行政裁判制度の“翻訳”:グローバル化と国民国家形成」に集約されている(報告内容の公刊は、2016年度に行う予定である)。また、前所長のMichael Stolleis教授をはじめとする同研究所およびフランクフルト大学の研究者との共同研究により、比較法史の研究として上記の研究を進めた点は、重要な前進であった。 行政救済の対象となる法関係の分析と制度形成の主体の考察として、法学教育の形成過程の検討も行った。そこでは、近代社会における「市民」(主権の担い手、人権の享有主体)教育と「国民」(国民国家の担い手)教育との関係を整理する必要があることを指摘し、ごく簡単ではあるが、戦後民主主義法学における「市民」像、70年代における変革主体としての「市民」像、80年代の市民法論における「市民」像、反グローバリズムの「マルチチュード」像を考察した。 上記のほか、行政裁量の司法審査(行政権と司法権との関係史)に関する論文およびグローバルな行政法関係の下での行政救済に関する論文を公刊した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マックスプランク欧州法史研究所の重点研究領域「法の翻訳(Translation)」の共同研究において、2016年2月、同研究所の招待により約1か月間研究滞在し、総括研究報告「19世紀末の日本における行政裁判制度の“翻訳”:グローバル化と国民国家形成」を行うことができた。要旨は以下の通り。 (1) Man koennte sagen, dass die Universalitaet des 1890 entstehenden japanischen Verwaltungsgerichtssystems gerade in seiner begrenzten Funktion lag: Sie war der Logik der Translation und der nachholenden Modernisierung geschuldet und war darin gerade nicht Japan spezifisch. Im Hintergrund dieser Begrenzung gab es die Forderung nach der raschen Gestaltung des modernen Nationalstaates von oben. Die Auswahl des deutschen Rechtssystems als Modell dafuer war notwendig. (2) Der Gleichgewichtspunkt der Dynamik im "Zwischenraum" wird durch die aussenpolitischen und innenpolitischen Erfordernisse fuer die Modernisierung dieses Staates entschieden. Wir koennen die Begrenzung des Umfangs des verwaltungsgerichtlichen Rechtsschutzes auf die Taetigkeit der Privaten als diesen Punkt verstehen. (3) Aus dem historischen Gesichtspunkt wurde die oben erwaehnte "Translation" als ein Teil der Gestaltung des Nationalstaates in der letzten Phase der ersten Globalisierung ausgearbeitet. In der heutigen zweiten Globalisierung sollte man unter dem Begriff der "Translation" mehrstufige gesetzgebende Handlungen der verschiedenen Akteure im weltweiten Raum verstehen.
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度は本研究の最終年度であるので、成果の公表に重点を置くことにする。 第1に、上述の共同研究の成果「19世紀末の日本における行政裁判制度の“翻訳”」の公表である。Stolleis教授ほかMax-Planck-Institut等の研究者による批評をえた上で公刊することにしたい。 第2に、国民国家体制のグローバルな編成と行政裁判制度の形成過程との関係を分析するという課題についても、中間報告的な論文を公刊することとしている。2016年末までに、論文「グローバル化と現代行政法」(白藤・岡田編『現代行政法講座・第1巻』日本評論社刊)として、公表する予定である。本研究との関連では、1867年オーストリア国基本法中の行政訴訟関係条項(15条等)と1875年10月制定の同国行政裁判所法、フランスの委任司法に関する1872年法の検討が重要である。また、グナイストとモッセの影響をたどる上では、1875年のプロイセン行政裁判所法の分析も欠かすことができない。これらについては、最新の研究成果であるSommermann/Schaffarzik (Hrsg.), Handbuch der Geschichte der Verwaltungsgerichtsbarkeit in Deutschland und Europaなどを参照して考察を進めるほか、必要に応じて調査も行いたい。 第3に、上記の中に日本と東アジアの行政救済制度の形成過程と現状を位置づけることにしたい。東アジアという視点については、これまで、司法制度改革・行政救済制度・経済行政法の研究について韓国・台湾・中国の行政法研究者と交流があるので、これらの研究者の協力を得て、行政救済制度形成史という視点から、東アジアにおける近代国家および国家間関係の形成過程を考察する。
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Research Products
(8 results)