2016 Fiscal Year Research-status Report
「生命に対する権利」を巡る「市民的価値」と「軍事的価値」との鬩ぎ合い
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26380056
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Research Institution | Tsuyama National College of Technology |
Principal Investigator |
大田 肇 津山工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (30203798)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 生命に対する権利 / 1998年人権法 / ヨーロッパ人権条約 / イギリス軍事法 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年9月、Warwick大学において、McEldowney教授(憲法学)とイギリス軍兵士に「生命に対する権利」の適用を認めたSmith 事件最高裁判決を巡る評価について、意見交換をおこなった。教授とは従来から情報交換をおこなっており、前回の意見交換では、教授は国外のイギリス兵士に1998年人権法の適用を認めることに反対の意見であり、軍事法に服しているイギリス兵には1998年人権法の適用を認めるべきであると考えていた申請者と鋭く対立するという関係にあったが、今回も、この問題に関しては議論は平行のままであった。が、それに加えて、Chilcot Inquiry Reportに関する教授の意見を聞くことができた。帰国後も、この問題に関する情報提供を得ている。 2017年3月、再びWarwick大学を訪問し、Andrew Williams 教授(人権法)とイギリス軍と人権問題に関する意見交換をおこなった。特に、2016年9月の控訴院判決(Al-Saadoon v. Secretary of State for Defence)に関する情報は、この10年間ほどイギリス国防省・政府が敗訴を強いられてきた状況に変化が生じていることを示すものであり、ほぼ同時期から始まったイギリス議会における、海外で戦闘活動に従事するイギリス軍につきヨーロッパ人権条約から免脱させようとする議論とともに、大いに注目すべき展開であり、こうした情報を早めに入手できたことは研究の方向性を明確にする上で、非常に有益であった。 残念ながら、こうした動向を踏まえた研究の成果を2016年度内にまとめることはできなかったが、2017年度にはまとめて公表する作業・準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
イギリス軍兵士に「生命に対する権利」の適用を認めたSmith 事件最高裁判決の後、それが差し戻された高等法院判決がまだ下されないことから、司法の最終判断が示されていない状況が続いている。「生命に対する権利」、戦闘行動免責および安全配慮義務などの1998年人権法、ヨーロッパ人権条約およびコモンロー上の争点が、詳細な事実認定をもとに判断されると期待されているが、もうしばらく待たなければならない。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の高等法院判決を待ちつつも、1998年人権法の適用範囲に関し新たな見解(海外でのイギリス軍兵士への適用に関し、現場での実効的支配の有無を精査する)を示した2016年9月の控訴院判決(Al-Saadoon v. Secretary of State for Defence)の分析・検討、イギリス議会における、海外で戦闘活動に従事するイギリス軍につきヨーロッパ人権条約から免脱させようとする議論の進展の追究等、研究課題の「拡散」に対応していく。
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