2015 Fiscal Year Research-status Report
「疑似」集権システムによる国連平和維持機能の代替可能性とその限界
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26380058
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
酒井 啓亘 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (80252807)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 国際連合 / 平和維持活動 / 多国籍軍 / アフリカ連合 / 地域的機関 / 国連憲章 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は2つの事項について検討を進めた。第1に、国連平和維持分野における地域的機関の役割を分析するため、国連と地域的機関の関係について、とりわけ国連とアフリカ連合(AU)の関係について実証的な考察を行った。その検討結果の一部は、"New Relationship between the United Nations and Regional Organizations in Peace and Security: A Case of the African Union", in S.Hamamoto, H.Sakai & A.Shibata (eds.), "L'etre situe", Effectiveness and Purposes of International Law. Essays in Honour of Professor Ryuichi Ida (Brill, 2015), pp.165-189.にまとめられ、AUの側には文書上、国連の権限を否定しうる要因が定められているものの、実践上は国連もAUもお互いの権限を尊重し合っており、そしてそれはアフリカ大陸においてはAUに第一義的責任があり、国際の平和と安全の維持に関しては国連安保理に主要な責任があるというかたちで了解がなされていること、これを制度的に担保するため両機関では継続的な対話が様々なレベルで行われていることが明らかにされた。 第2に、国連憲章第7章に基づく行動を認められた「強化されたPKO」の事例として国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)を取り上げ、特に日本の自衛隊の参加が法的にいかなる問題を抱えているのかを検討した。この成果は、「国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)と日本」柳井俊二・村瀬信也編『国際法の実践 小松一郎大使追悼』(信山社、2015年)25-43頁に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国連憲章第7章に基づく様々な活動を実証的にフォローしていること、そしてその一部を検討結果として公表できたことで、当初の計画にほぼ沿った形で研究が進行しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き国連憲章第7章に基づく活動について、平和維持活動や多国籍軍型軍事活動、地域的機関の活動を実証的に確認・分析するとともに、憲章第7章に基づかない軍事活動で自衛権以外の正当化事由が主張されている活動も視野に入れ、「疑似」集権システムの全体像に迫ることにする予定である。
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Research Products
(2 results)