2014 Fiscal Year Research-status Report
国連行政に関する体系的研究―国際組織法の観点から―
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26380060
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
黒神 直純 岡山大学, 社会文化科学研究科, 教授 (80294396)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 国際連合(国連) / 国連行政 / 国連事務局 / 事務総長 / 国連職員 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、本研究の第1段階として、国連憲章第15章における事務局の法的地位に関する研究を行った。具体的には、国連の起草過程からこれまでの事務局研究に関わる先行研究を網羅的に調査し、個別の条文に即した形でこれまでの実行を分析した。事務局研究の土台として、いわば、関連条文に関する独自のコメンタリーを作成した。 憲章97条において、事務総長の下に、事務次長や事務次長補が部局長として配備され、その下に職員が従属する一元的な官僚組織が念頭に置かれている。また、101条に基づき、事務総長が事務職員を任命する。ここでは、法的問題として、職員規則に定められた職員の法的地位や、101条3項に定められた、採用や人事配置の基準のあり方などの諸問題が俎上に上った。 職員の地位の独立について定める100条に関しては、冷戦時代に横行した政府からの職員派遣(secondment)制度をはじめ国家による事務局への影響および圧力の問題は本条の中心的検討課題であった。 今日PKOをはじめとして、主要機関から事務総長に委任される多くの業務は事務総長に関する98条を根拠としている。さらに、明確に事務総長に政治的権限を付与しているのが99条である。ここでは主に国連創設から冷戦時代の歴代事務総長の実行を検討した。冷戦後とりわけアナン事務総長以降の比較的新しい実行は、28年度に実施する事務総長権限の範囲の分析の中で扱う。 研究方法として、国連憲章の起草過程およびこれまでの実行に関して、主として1次資料であるU.N.C.I.O.や国連憲章の諸コメンタリーなど先行研究を網羅的に調査し仔細に検討した。これに加えて、国内の研究機関や在京の国連広報センター、データベースなどを利用し資料収集に努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究が当初の計画通りに進捗しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、平成27年度には、当初の予定通り、第2段階として、 国連行政の研究―最近の傾向分析と事務局のあり方―を研究し、平成28年度の事務総長権限の研究と総括につなげていきたい。 まず、平成27年度においては、アナン事務総長以来の改革を中心に検討するとともに、今日事務局の抱える課題を析出し、今後の事務局のあるべき姿を描き出すことを主眼とする。コフィ・アナン事務総長時代の1997年に事務局の従来の構造は大きく変容し、事務総長の下に副事務総長と上級管理グループ(いわゆるキャビネット)が置かれることになった。これらの機構改革により、事務総長はリーダーシップを強化してきた。さらに、アナンは、この流れを受けて、潘 基文事務総長時代には、2009年4月には職員規則が改正され、従来の煩雑な職員の任用形態が改められ、より一元的な管理を目指すことになった。また、職員の身分保障制度については抜本的見直しがなされ、2009年7月より、国連行政裁判所に2審制が導入された。これを補完するオンブズマン事務所の調停手続も新設された。以上から、事務総長を頂点とした機構改革が徐々に動き出したことに鑑み、潘 基文体制までの国連行政の評価をここで仔細に検討する予定である。国連総会の第5委員会および第6委員会の関連文書、事務総長報告、国連行財政問題諮問委員会(ACABQ)報告書、国連紛争裁判所および上訴裁判所判決などの資料の分析が中心となる。それと併せて実際に国連本部の所在するニューヨークに出向き各関係者にインタビューも敢行する。 以上を踏まえ、翌平成28年度には、これまで事務総長が果たしてきた機能のうち特に重要と思われる政治的機能に着目し、平成26年度での前提的研究を踏まえた上で、憲章98条に基づく活動と憲章99条に基づく活動に分けて研究を行う。
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