2014 Fiscal Year Research-status Report
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26380062
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
竹内 真理 岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (00346404)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 国際犯罪 / 普遍管轄権 / 罪刑法定主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度にあたる本年度は、罪刑法定主義を基軸とした管轄権理論の再構成に向けた予備的作業に着手した。 第1に、個人が国際法上の責任を負う「国際法上の犯罪(crime under international law)」に関して、それらの成立の経緯を再検討した。ある行為を犯罪化(criminalization)するにあたっては、実体的な禁止規範の存在とともに、そうした禁止規範の内容を実現する手続の整備が必要とされる。この点、国際社会における「国際法上の犯罪」の犯罪化のプロセスは、ニュルンベルク・東京裁判と国連総会におけるニュルンベルク原則の承認を通じて実体的な禁止規範が確立される一方、手続の整備については、冷戦期には進展が見られなかった。したがって、国際法上の犯罪が実定法上確立するといえるのは、1990代以降、各種刑事裁判所が設立されて以降であると結論される。このように国際法に特有の犯罪化のプロセスを跡づけることで、国際法上の罪刑法定主義概念の明確化に向けての予備作業とした。以上の成果を英文の論文として公表した。 第2に、「国際法上の犯罪」に対する普遍管轄権の行使条件を巡る最近の展開について検討を行なった。近年「国際法上の犯罪」について、国内法で普遍管轄権を設定する国が増加するのに伴い、具体的事案における司法・執行管轄権の行使がどのような条件に服するのかに関心が高まっている。この点で、「被疑者の所在」を捜査や訴追の開始条件とする国内法規定を設ける国が相当程度あることに着目し、それら国家実行の評価枠組み、および国内法規定の解釈過程における国際法の役割について検討した。これらは管轄権の評価枠組みを再検討し、またそのプロセスで罪刑法定主義の要請がどのように関わりうるかについても考察を行なうものであり、研究課題の予備作業の一部を構成する。以上の成果を和文の論文として公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
罪刑法定主義を基軸とした管轄権理論の再構築へ向けて、「国際法上の犯罪」に焦点を当てて検討を行い、一定の知見を得ることができた。またその成果を、2本の論稿(英文・和文)として公表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は、罪刑法定主義の内実に踏み込んだ研究を行なう。 第1に、国内法上の罪刑法定主義の内容について整理する。とりわけそれが域外行為に対する管轄権行使に対してどのような制約を及ぼすのかについて検討を行なう。 第2に、国際平面での罪刑法定主義の内容を整理する。とりわけ、各種人権条約実施機関及び国際刑事裁判所において示された同原則の内容について精査する。 最後に、国際平面における罪刑法定主義と、国内平面におけるそれとの異同について整理し、国際法上の犯罪を国内で訴追・処罰する際に、罪刑法定主義がどのような形で考慮されるのかについて検討を行なう。
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Causes of Carryover |
研究会への出席を1回キャンセルしたために、1回分の国内旅費を消化できなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は予定通り英文・和文での執筆を進め、国内・海外での報告を積極的に行なう。26年度に消化できなかった国内旅費は、国内での報告のための旅費として消化する予定である。
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