2015 Fiscal Year Research-status Report
投資協定の解釈における締約国の役割‐WTO紛争解決制度が与える示唆
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26380067
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
石川 知子 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (20632392)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 条約解釈 / 投資協定 / WTO |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終目的は、投資協定、特に投資仲裁に対する批判の高まりを背景に、その主な原因に投資協定の解釈適用に対する懸念があるとの問題意識に基づき、投資協定とWTO紛争解決機関とを比較し、後者の条約解釈アプローチが投資協定に与える示唆の有無、あるとすればその内容及び限界を検討することを通じ、投資協定が直面する問題への対処に係る理論を構築することである。 平成27年度は、研究の第2段階として、WTO法における紛争解決手続と投資仲裁との間の現状比較を通じ、前者が効率的かつ正当性を有する国際的紛争解決機関として広い支持を獲得してきたことに対し、後者に対する批判と懸念がますます高まっている現象、及びその原因の一つに、両者の条約解釈アプローチの相違があるとの仮説を検証し、学会"2015 Taipei International Conference on. Arbitration and Mediation"(国立台湾大学)で発表するとともに、その結果を論文"The Principle of Effective Interpretation in the World Trade Organization and Investment Arbitration: Difference in Parameters?"として執筆し、Contemporary Asia Arbitration Journalに発表した。同テーマでの学会発表として、ほかに、"Balancing Investment Protection and Public Policy Goals: the Role of Dispute Settlement"とのタイトルで、Asia FDI Forum 2015 (Chinese University of Hong Kong)で発表した。さらに、同テーマにつき、谷口安平京都大学名誉教授との共著で、"Balancing Investment Protection and Other Public Policy Goals; Lessons from World Trade Organization (WTO) Jurisprudence"を執筆し、本論文は、2016年度に、Julien Chaisse他編、A “Liber Amicorum”: Mitsuo Matsushita, A Critical Assessment of the International Economic Law and Governance(オックスフォード大学出版会)の章として出版される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度に、投資仲裁が直面する批判の背景に存在する大きな要因のひとつとして、投資仲裁廷による条約解釈アプローチに対する懸念が存在することを、様々な論点を通じ論証した。平成27年度は、この前提の上に立ち、研究の第2段階として、WTO法が投資協定の解釈に対し与え得る示唆につき、2回の学会発表を行い、査読付論文を2本執筆(1本は発表、1本は出版契約済)した。したがって、本研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である本年度は、WTO紛争解決機関と投資仲裁との間の比較を通じ、その共通点、相違点を明らかにし、様々な本質的相違の存在にも関わらず、後者が前者から学べる点があるか否か、あるとしてその内容及び限界は何かを明らかにするという本研究の最終目的達成を目指す。その成果を、国際経済法学会2016年度研究大会(10月16日、小樽商科大学)の午後の共通論題において、元WTO上級委員会委員Giorgio Sacerdoti教授(ボッコーニ大学(ミラノ))及び、同大学のAnna De Luca特任教授を招待し、研究代表者を含め、「投資紛争解決制度の再考察:WTO紛争解決・国際商事仲裁との比較が与える示唆」と題したセッションで発表する。さらに、10月26日に、国際商事法研究所において、松下満雄東京大学名誉教授(元WTO上級委員会委員)、Sacerdoti教授及び研究代表者において、WTO法、外国投資法に係るセミナーを開催予定である。
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Causes of Carryover |
平成27年度に国際会議を実施する予算を組んでいたところ、国際会議の実施を平成28年度(国際経済法学会2016年研究大会、国際商事法研究会セミナー)に行うこととしたため、使用額が当初予定を下回った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
国際経済法学会2016年研究大会、国際商事法研究会セミナーへの招聘費用、会議通訳費用等に加え、研究代表者の英文校閲、海外での学会発表費用等に使用する予定。
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Research Products
(5 results)