2014 Fiscal Year Research-status Report
人権条約の実施実現に向けた国際実施機関と国内実施機関の建設的対話
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26380072
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
徳川 信治 立命館大学, 法学部, 教授 (60280682)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 欧州人権条約 / 欧州人権裁判所 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在緊張関係にある欧州人権裁判所と締約国との間における様々なチャネルを通じた対話(義務履行要請も含む)の、法的基盤とその実効性を検討することが研究課題であった。 本年度では、この研究を遂行するための基礎的作業を行った。まず第1に、これまで欧州人権裁判所による判示事項の言及内容に関する変化を考察することを通して、その法的基盤を明らかにすることであった。現行の判決手続きや判決執行監視手続きなど様々な手続きの法的根拠となっていた欧州人権条約上における法的基盤に関する問題の考察を通じて、欧州人権裁判所判決に見られる論理を整理を行った。 第2に、欧州人権裁判所の活動との間に、欧州人権条約上に課せられる義務内容に対する締約国の理解とのズレについて、どのように解決しようとしているのかを検討した。その作業のなかで、締約国の意思が欧州評議会各政治機関の中でいかに現れているかを探る。これによって、当該締約国の国内事情が、欧州評議会各機関・欧州人権裁判所における判決やその執行監視に関わる基準策定にいかなるインパクトを与えているのか、その対立と協働を探る。 後者については、判決やその後のフォローアップを丹念に見ることによって傾向をつかむ作業を行うとともに、人権裁判所判事側から見た内容と、国内社会や法曹界における理解と内容について検討を行った。それについて、欧州人権裁判所判事や国内検事などに聞き取りも含めて実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究を通じて特徴的に現れた事例のフォローアップを行う。さらに締約国の意思が欧州評議会各政治機関の中でいかに現れているかを探る作業の中で、未だまとまった実証的研修成果作業が完了しておらず、またその法的基盤に関する研究を残した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで進めてきた方法を継承しつつ、その中での成果を得るように研究を実施する予定である。昨年度において残された課題を優先的に進めるが、昨年度の現地調査の中で、一定の資料を収集することが可能となったため、その分析を中心に進める。 本研究代表者が、並行して進めてきた国際人権規約における実態分析を含め、その両者の異同を明らかにすることによって、本研究の理論的解明を行う予定である。
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Causes of Carryover |
年度末(2015年2-3月)に国外出張を予定し、かつ、円安による旅費の高騰が予想されたため、その予算をできる限り確保する方策をとっていた。ただ、できる限り旅費を抑えることができたことにより、若干の繰り越しが生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度においては、以下の研究を予定している。第1に、欧州人権裁判所の法的基盤の変遷について人権規範の国内インパクトの観点から、国際法における国際裁判に関する議論を踏まえた上で、その異同を明らかにする。第2に、閣僚委員会及び議員総会の判決執行監視および締約国との対話にかかる役割を整理しながら、人権実施に関わる欧州政治機関の役割について、国連諸機関との相違をも意識し、他の人権条約との関連性を検討する。以上の本研究計画において、現地での聞き取りがより成果を上げることができるため、その費用を捻出するとともに、本研究に関連する近刊の書籍の出版が出始めているため、その購入に充当させる予定である。
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Research Products
(1 results)