2015 Fiscal Year Research-status Report
ブラッセルI規則改正とわが国およびEU域外諸国への影響
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26380074
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
岡野 祐子 関西学院大学, 法学部, 教授 (60224044)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ブラッセルI改正規則 / EU国際私法 / 国際裁判管轄 / 判決の承認・執行 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度は、「ブラッセルI改正規則」が2015年1月10日から適用開始されたことを受け、EU加盟諸国で公刊される同改正規則に関する論考、およびその条文解説等の資料を入手し、その読み込み及び分析作業に当たった。本研究は、「内向きの規範」の性質を持つと指摘されてきた改正前の「ブラッセルI規則」が、改正により、わが国を含むEU域外国への適用に関してどのように変化したか、との視点に立つものであるが、資料の分析作業に当たっては、EU内においても多くの議論がなされ、改正条文の制定へと結実した以下の条文を、同視点の下で重点的に考察した。 すなわち、1.「残余管轄」に関する第4条2項、2.訴訟競合及び関連訴訟への訴訟中止に関する第33条、34条、3.合意管轄に関する第25条である。 海外での調査としては、イギリスのロンドン大学に赴き資料収集を行った。イギリスではかねてより、大陸法的な性質を持つ改正前「ブラッセルI規則」に対して、英米法的観点から批判的な議論が活発に展開されており、それらの批判は、今回の改正規則の条文にも反映されている。今回の調査により有意義な資料収集をすることができた。 研究成果としては、論考「夫婦間の財産問題に関するEU国際私法―EU規則相互の関係とEU非加盟国からの視点ー」の執筆に際し、 (1)改正前「ブラッセルI規則」から夫婦間の扶養に関する問題が分離され「EU扶養規則」となった経緯、および(2)改正前「ブラッセルI規則」が上述2.の「ブラッセルI改正規則」第33条、34条へと改正されたことの「EU扶養規則」第12条の解釈に与える影響、の2点の問題につき、研究成果の一部を反映させることができた。 またさらに、現在、上記3.の合意管轄に関する第25条に焦点を当て、「ブラッセルI改正規則における合意管轄規定(仮題)」と題する論考を執筆中であり6月に脱稿予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2015年度は前述のように、当初の予定通り、「ブラッセルI改正規則」に関するEU加盟国内で公刊される新たな論考、およびその条文解説等の資料を収集し、その読み込みおよび分析作業に当たった。海外での調査による資料収集も行い、有意義な資料を入手することができた。 研究成果については、論考「夫婦間の財産問題に関するEU国際私法―EU規則相互の関係とEU非加盟国からの視点ー」において、同論考で取り上げたEU規則のうちの「EU扶養規則」について、同規則の制定過程における改正前「ブラッセルI規則」との関わり、および同規則第12条の解釈における「ブラッセルI改正規則」第33条、34条の影響について、分析、考察を述べた。夫婦間の財産問題に関するEU規則のうち、特に「EU扶養規則」と改正前「ブラッセルI規則」および「ブラッセルI改正規則」との関係性の言及は欠かせない。本研究の成果の一部を、同論考において反映させることができた。 また現在、合意管轄に関する第25条に焦点を当て、「ブラッセルI改正規則における合意管轄規定(仮題)」と題する論考を執筆中である。 以上のように、「研究の目的」の第2年度の達成度としては、順調に達成できていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年1月10日より適用が開始されている「ブラッセルI改正規則」については、現在も続々と同規則に関する論考・資料が公刊されている。2016年度も2015年度に引き続き、さらに新しい資料の収集を行い、その読み込み・分析・考察を行う。 海外調査としては、改正前「ブラッセルI規則」の問題点につき活発に議論が行われ、今回の改正規則にその議論の多くが反映されたイギリスに赴き、現地で資料の収集にあたる予定である。
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Causes of Carryover |
2015年度は、「ブラッセルI改正規則」に関する資料として購入予定であった図書(洋書)の刊行が遅れたため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
これについては、2016年度に、当初の計画通り、図書購入費として使用する予定である。
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Research Products
(1 results)