2015 Fiscal Year Research-status Report
倒産手続下における労働力調整モデルの適用をめぐる比較法的研究
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26380075
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
池田 悠 北海道大学, 大学院法学研究科, 准教授 (00456097)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 社会法学 / 労働法 / 労働力調整 / 倒産 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、倒産手続下において、労働力調整に当たって労働者数の削減に訴えざるを得ない場面が想定されることから、労働条件変更を中心にした日本の労働力調整モデルが妥当しない可能性があるにもかかわらず、未だ考察が不十分な状況に置かれている状況に鑑み、労働力調整モデルの適用に当たって倒産手続特有の労働者の利益状況を反映する手法にかかる問題状況を析出するとともに、比較法的に考察するものである。 研究2年目である本年度は、前年度に引き続いて日本法研究を深化させつつ、日本法を通して得られた課題の解決に資する比較法的見地の獲得を目指して、倒産手続下での労働力調整にかかる外国法の取組みを分析した。ここでは、労働力調整にかかる立法的な対処が進んでいる場合、議論の成熟・整理が図られる反面、倒産手続下での労働力調整に向けた対応は、倒産法制・労働法制双方の相違も反映して、国により大きく異なる点に注意しながら考察を進めることとした。 まず、日本法の深化に関しては、日本の労働力調整モデルにおける整理解雇法理の位置づけを、無期雇用にかかる解雇権濫用法理と有期雇用にかかる雇止め法理との比較を通じて検討しつつ、倒産手続下での適用における課題を検討する作業を継続した。また、今年度は手続的な課題にも着目し、倒産手続下での不当労働行為救済手続の適用をめぐる諸問題の解明にも精力的に取り組んだ。また、比較法研究としては、アメリカでの倒産手続下における不当労働行為救済手続の取扱いを比較法の素材として研究したほか、その前提となる日本法の問題状況を精緻化する作業の一環として、日本と問題状況の類似する韓国法の取組みを分析することとし、その際には、研究の中間とりまとめの一環となる一定の示唆も獲得することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、倒産手続下における労働力調整モデルの適用に当たって、倒産手続特有の労働者の利益状況を反映する手法にかかる問題状況を析出するとともに、比較法的に考察するものである。そこで、研究2年目の本年度は、前年度の研究成果を元に、日本法の深化を進めるとともに、比較法研究を開始した。そして、本年度が3か年に及ぶ研究計画の中間年度に当たることから、本年度の中間に当たる10月に、本研究に関係する学会報告を組み込むことによって、中間的な研究成果の取りまとめを図るとともに、同時点までに挙げた研究成果の一部を学界に還元し、研究者・実務者双方と意見を交換することで、年度後期以降の研究目標の達成に向けて道筋を整えることができた。そして、学会報告に向けた準備的考察を進める過程で、研究計画において予定されたアメリカ法との比較法研究を実施し、同時並行して、日本と法的問題状況の類似した韓国法を考察の対象に据えたことで、日本法の抱える問題状況を精緻化し、日本と異なるアメリカ法その他の比較法研究に向けて、有意義な考察軸の設定も行うことができた。このように、今年度は、前年度に続く日本法研究を深化させつつ、次年度に引き続く比較法研究を開始し、考察軸も精緻化することができたため、当初の研究目的を概ね予定通りに達成することができたものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、本年度までに獲得された日本法研究と比較法研究の考察軸を元に、比較法的見地の獲得と比較法的考察に基づく日本法への示唆の獲得を目指して、倒産手続下での労働力調整にかかる諸外国の状況を分析する予定である。具体的には、日本法研究を通して得られた課題の解決に資する比較法的見地の獲得を目指し、倒産手続下での労働者数の削減にかかる外国法の取組みを分析する。ここでは、特に外国法の労働法・倒産法両面にかかる制度的相違のほか、文化的・歴史的・社会的なバック・グラウンドの相違をも視野に入れつつ、必要に応じて実証的な研究手法も併用する。以上の比較法的知見を元に、次年度後期には、倒産手続下での労働力調整にかかる法規制を構造的に分析し、「倒産労働法」としての労働力調整モデルの確立を目指す。
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Causes of Carryover |
今年度の研究費に関して、若干の次年度使用額が生じたのは、①年度内に予定されていた一部の研究会出席にかかる出張旅費の会計処理が、次年度に繰り越されたこと、②年度末に購入を予定していた書籍の出版・流通が、次年度初頭にずれ込んだことに伴うものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越された研究会への参加にかかる旅費と、出版時期のずれ込んだ書籍の購入にかかる経費として使用する。
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Research Products
(8 results)