2014 Fiscal Year Research-status Report
雇用流動化政策の下での新たな労働市場法制とセーフティネットの構築
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26380078
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
大内 伸哉 神戸大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (10283855)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 解雇 / 金銭解決 / 労働市場 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,雇用流動化政策を進める上において必要とされる雇用・労働法制のあり方を検討するものであり,平成26年度は労働者の解雇の金銭解決制度を中心に,イタリア法,フランス法,スペイン法,ドイツ法について情報を収集して,日本法と比較しながら,各国の法制度についての理論的な検討に着手すると同時に,経済学におけるこのテーマに関するアプローチの仕方についても経済学の研究者から意見を聴取し,議論を重ねながら,分析を深めてきた。 このような作業を通して,日本で現在検討されている,解雇の金銭解決制度において,その補償金の額を具体的に検討するうえにおいて,解雇予告手当,退職金,雇用保険等の退職を契機として支給される様々な公的ないし私的な金銭給付の法的性質をどのように考慮するかが重要な問題であることが明らかになったため,これらの点を分析する作業にも着手してきた。 さらに,経済学の研究者との議論から,金銭解決を解雇の有効要件の中に組み入れる事前型の制度と解雇の効果における制裁のあり方としてとらえる事後型の制度との違いが,実はかなり相対的なものであることが明らかになってきたため,こうした点をふまえた制度のあり方を検討し,また金銭解決制度のあり方は,企業および労働者の双方の行動に影響を及ぼす面があることが明らかになったため,たとえばスキル形成のインセンティブという観点などから,適切な補償金額の決定方法や基準設定が,どのようなものでなければならないかについての検討も行ってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究における最も重要なテーマである金銭解決制度について,かなりの情報が入手され,それを踏まえて,有意義な検討を行うことができたこと,それと同時に,その作業の過程から,新たな問題意識も生まれてきたこと,および,経済学の研究者との何度かの検討により,研究の視野が広がることによって,初年度としては,次年度以降の研究を進めるうえでの基礎となるような充実した内容の濃い研究ができたと考えている。 その反面,セーフティーネットに関する調査については,若干予定よりも遅れ気味となったが,これは金銭解決制度という本研究の中心的なテーマに時間をやや多く充てたためであり,次年度以降は,セーフティネットに関する調査面により多くの時間を割いて,研究の進行を調整することが可能であり,かつその予定でいる。 また解雇の正当性の基準に関する研究については,今年度の目標としていた情報収集は,おおむね順調に進んでいる。 以上から,本研究は全体として「おおむね順調に進展している」と評価してよいと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は,初年度においては,計画どおりに,おおむね順調に進展している。次年度以降,研究の3つの柱(解雇の正当性の基準,金銭解決,セーフティネット)となる部分について,2つめの金銭解決制度にウエートを置いたために,3つめのセーフティーネットに関する研究がやや手薄になった部分を,挽回をしていく予定である。 なお,本研究は,政府が現在進めようとしている政策の動向とも密接に関係している。たとえば,3月に発表された規制改革会議(雇用ワーキンググループ)の提案において,解雇の金銭解決制度についても具体的な政策提言もあったことから,その動きも十分に視野に入れ,場合によっては,その動きに弾力的に対応できるように,研究の進行を調整していく予定である。
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Causes of Carryover |
海外調査を3月に予定していたが,実父が一時,危篤状態になり,日本から離れることが困難となったため,時期を延期した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
父の体調が快復したたため,今年度中に,予定していた海外調査を実行する予定である。
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