2016 Fiscal Year Annual Research Report
A Legal Study of Multiple Discrimination in Employment
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26380082
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
浅倉 むつ子 早稲田大学, 法学学術院(法務研究科・法務教育研究センター), 教授 (80128561)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 複合差別 / 雇用差別禁止法 / マイノリティ女性 / 性差別 / イギリス平等法 / 女性差別撤廃条約 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、雇用分野における複合差別禁止法理が有する雇用差別の是正・救済可能性について、イギリスやEUの立法動向や判例法理を分析することを通じて、明らかにすることを目的とした。複合差別については、政策課題としては言及されていても、法学的観点からの理論的研究はほとんどみられなかったため、労働法の観点からの本研究には意義があると考えた。 平成28年度(最終年度)には、過去2年間にわたって実施してきた、EUや女性差別撤廃条約の比較法的研究のとりまとめを行い、加えて、日本における法制度的改革の提言についても、整理する作業に従事した。それらの成果は、浅倉むつ子『雇用差別禁止法制の展望』(有斐閣、2016年12月)ならびに浅倉むつ子監修『ジェンダー法研究第3号 特集複合差別とジェンダー』(信山社、2016年12月)として、とりまとめ、刊行した。 研究期間全体を通じて得られた成果は、以下のように要約できる。第一に、複合差別を禁止する立法には3つの類型があることが明らかとなった。①差別事由の限定的リスト化、②開かれたモデル、③拡大可能性のあるリスト化である。第二に、①のモデルであるイギリスの2010年平等法規定とその下での判例法理の研究から、差別事由の包括的な禁止という法形式を採用することによって、複合差別の救済には飛躍的な展開があるということがわかった。第三に、日本における複合差別の禁止と救済を考察する前提の作業として、女性差別撤廃条約に基づく国家報告の審査の過程を分析して、条約委員会による「総括所見」を契機として、マイノリティ女性たちの複合的差別の実態を明らかにすることができた。第四に、日本の課題としては、包括的差別禁止立法の必要性を構想し、禁止されるべき差別事由を位置づけ、いくつかの差別事由が重複する場合を複合差別として違法とする条文をおくことが重要であるとの結論に至った。
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Research Products
(8 results)