2014 Fiscal Year Research-status Report
同化主義か,多文化主義か―外国人受入政策に関するフランスとシンガポールの比較研究
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26380084
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
江口 隆裕 神奈川大学, 法学部, 教授 (10232943)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 移民政策 / 同化主義 / フランス / 多文化主義 / シンガポール / マレーシア |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度である平成26年度は、フランスについては同化主義をとるにいたった歴史的背景等に関する文献調査及び移民関係団体のヒアリングを行った。具体的には、9月10日から18日まで同国を訪問し、パリ市図書館等でフランス革命期以降の外国人関係法令等を調査し、現行のフランス民法典第21-24条で規定している同化主義の淵源を探った。また、マグレブ労働者の非宗教組織であるATMF(フランス・マグレブ労働者協会)のパリ本部及びエクサンプロヴァンス支部を訪問し、高齢となったマグレブ移民労働者等と意見交換をした。 なお、研究実施計画では、移民に対する同化政策を担っているフランス移民・統合事務所でヒアリングを行う予定だったが、これを所管する内務省の了解を取ることができなかったため、実現できなかった。 また、シンガポールに関しては、研究代表者が昨年10月下旬から2週間ほど入院を余儀なくされたため、研究実施計画で予定していたシンガポールでの現地調査を行うことができなかった。その後、病状が回復したため、年度末の3月15日から20日にかけて隣国マレーシアを訪問調査した。シンガポールは1965年にマレーシアから分離独立しており、シンガポールの歴史的発展の経緯を知るためには、マレーシアとの歴史的、社会的関係を理解することが不可欠と考えたためである。具体的には、国立マレーシア大学を訪問し、移民の専門家と意見交換を行った。その結果、マレーシアも、シンガポールと同様、多民族国家であり、その経済発展は移民労働者に多く支えられているものの、マレー人を優遇するプミプトラ政策がとられている点が、シンガポールと大きく異なっていることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、フランスの移民政策における同化主義の歴史的沿革に関する資料を多く収集することができた。また、マグレブ移民の団体ともコネクションを持つことができ、当事者である移民労働者の意見を直接聞くことができた。 また、シンガポールに関しては、同国の調査自体はできなかったが、かつては同じ国であった隣国マレーシアの移民の実態を調査することができた。これによって、同じ多文化主義の国であっても、マレーシアと比較することにより、シンガポールの多文化主義の独自性を明らかにする手がかりを得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、フランスに関しては、同化主義の考え方が、入国管理、教育、就業、医療、年金など外国人労働者の生活関連政策の中でどのように生かされているのかを調査する予定である。そのためにも、内務省の了解を得て、実際に同化政策を担っているフランス移民・統合事務所でのヒアリングを実現したいと考えている。 シンガポールについては、多文化主義の法制度的沿革を調査するとともに、その考え方が入国管理、教育、就業、医療、年金など外国人労働者の生活関連政策の中でどのように生かされているのかを調査する予定である。
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Causes of Carryover |
平成26年10月下旬から2週間ほど入院したことにより、研究実施計画で予定していたシンガポールでの現地調査を行えなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は、昨年度の調査予定分を含めて、シンガポールでの現地調査を行う予定である。
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Research Products
(3 results)