2015 Fiscal Year Research-status Report
同化主義か,多文化主義か―外国人受入政策に関するフランスとシンガポールの比較研究
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26380084
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
江口 隆裕 神奈川大学, 法学部, 教授 (10232943)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 移民政策 / 同化主義 / フランス / 多文化主義 / シンガポール |
Outline of Annual Research Achievements |
2年目の平成27年度は、8月と3月にシンガポールで現地調査を行い、有益な成果を挙げることができた。まず、8月に、シンガポール国立大学(NUS)人文・社会科学部の国際人口移動、特に東アジアの人口移動の専門家と面会し、シンガポールの全般的な人口移動に関する情報を得るとともに、シンガポールの多文化主義に関する専門家を紹介してもらった。これを受け、3月には、同学部のシンガポール政治の専門家と会い、多文化主義の背景や理由などに関する情報を得ることができた。さらに、同大学マレー研究所の専門家に会い、シンガポールの移民政策について意見交換をした。また、同大学法学部の憲法学者から、シンガポール共和国憲法における多文化主義の位置づけについて情報を得ることができた。 次に、フランスについては、9月に現地調査を行い、基礎的資料を収集するとともに、懸案であった内務省の移民担当参事官との面会が実現し、フランスの同化主義に関する考え方や同化の判断基準などを入手することができた。合わせて、アフリカからの移民がフランスからイギリスに向かう拠点となっているパ・ド・カレにおける移民キャンプの実情を視察した。 これまでの研究によって、シンガポールの多文化主義、フランスの同化主義ともに、それぞれの国家の成り立ちに深く関わるものであり、その国を形作る根幹の1つをなすものであることが明らかとなってきた。このため、当初の研究実施計画で想定したよりも調査研究に手間と時間を要することになったが、着実に成果は得られている。 なお、研究実施計画では、各国の行政機関へのヒアリングを中心に据えていたものの、シンガポールに関しては行政機関の協力が得られず、大学の研究者を中心としたヒアリングとなったが、行政機関以上の成果を得ることができたと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は、入院のため、シンガポールに関する調査が予定通り進められなかったので、今年度は、シンガポールを2度訪問して重点的に調査を行い、ほぼ計画通りの成果を挙げることができた。また、フランスについても、EUのシリア難民受け入れ問題で多忙な中、フランス内務省の移民担当参事官が面会に応じてくれ、必要な資料を入手することができた。ここに感謝の意を表したい。 フランスの移民政策に関しては、逐次研究成果を紀要等に掲載しており、今年度執筆分だけで150頁近くになる。また、シンガポールの多文化主義に関しても、その要点を専門誌に執筆した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年に当たる平成28年度は、これまでの調査研究の成果を踏まえ、研究目的の達成に必要な事項について調査を行いたいと考えている。ただ、フランスにおける移民問題は、シリア難民の受け入れ問題を契機として、フランスのみならずEU全体の最大の政治問題となっており、イギリスのEU離脱問題に象徴されるように、事態が流動的で、今度どのような政治展開をみせるのか予断を許さない状況にある。このため、直近の難民問題については、可能な範囲でフォローするのに止めざるを得なくなるかもしれない。
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Causes of Carryover |
計画額と実績額に若干の誤差が生じたものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度の計画額と一体的に執行する予定である。
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