2014 Fiscal Year Research-status Report
対象被害者拡大の観点に基づく我が国のワンストップ支援発展の条件に関する実証的研究
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26380096
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Research Institution | Tokiwa University |
Principal Investigator |
千手 正治 常磐大学, 人間科学部, 准教授 (00406018)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
冨田 信穂 常磐大学, 人間科学部, 教授 (60105062)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ワンストップ / 刑事法学 / 刑事政策 / 被害者支援 / 被害者学 / 多機関連携 / アメリカ合衆国 / ファミリー・バイオレンス・センター |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、我が国及び米国における犯罪被害者に対するワンストップ支援の現状に係る調査研究ならびに論文執筆に従事した。 最初に本研究における問題提起として、千手正治「我が国における犯罪被害者に対するワンストップ支援の拡大対象に関する一考察」を発表した。本稿発表前には、必要となる基本文献の収集及び関連資料の収集も実施した。 我が国におけるワンストップ支援の現状についての調査では、既に文献等で我が国におけるワンストップ支援実施機関として紹介されている「かながわ犯罪被害者サポートステーション」及び「SARC東京」を訪問し、それぞれにおいて半構造化面接法による調査を実施した。この調査を通じ、我が国におけるワンストップ支援促進のためのとりわけ重要な要件として、①ワンストップ支援に係る機関・団体間における「顔の見える」関係の構築、ならびに②ワンストップ支援に係る法律上の根拠の確立が挙げられると感じた。 米国におけるワンストップ支援の現状についての調査では、カリフォルニア州フレズノ周辺の大学及び犯罪被害者関連機関を訪問し、同じく半構造化面接法による調査を実施した。一連の調査では、米国におけるワンストップ支援センターの代表例として、カリフォルニア州サンディエゴにあるファミリー・ジャスティス・センターが挙げられ、同センターでは一つ屋根の下に25をこえる被害者支援のための機関が集結しており、同センターをモデルとして全米にファミリー・ジャスティス・センターが設立されたことを知るに至った。他方、同センターのようなワンストップ支援センターの形態による犯罪被害者支援は、必ずしも全米において一般的ではないことや、ワンストップ支援そのものについても慎重論が存在するとの情報にも接した。 我が国及び米国におけるワンストップ支援の現状については、既に別の論文として纏めており、平成27年度中に発表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度においては、元来①基本文献の整備、②関連資料の収集・整理、③国内施設の訪問、④海外(米国)施設の訪問、⑤ワンストップ支援に関する考察及び論文等の発表について予定していた。 「研究実績の概要」においても示したとおり、とりわけ③と④については、極めて有意義な調査が出来たものと考えている。③については、民間の犯罪被害者支援センター拠点型のワンストップ支援センター及び病院拠点型のワンストップ支援センターといった異なるタイプのワンストップ支援センターを訪問・調査する機会に恵まれ、それぞれの利点や課題について知ることができたものと考える。また④については、我が国において犯罪被害者支援の先進国的な呼ばれ方をされるアメリカ合衆国においても、ワンストップ支援をめぐる内情は決して楽観的なものではなく、実践面において様々な課題を抱えていることを知ることができた。さらに⑤についても、平成26年度中に1本論文を発表していることに加え、研究代表者と研究分担者との共著による論文の原稿を既に書き上げ、投稿希望書も提出済である(原稿の提出期限が平成27年5月12日であるので、現在2名の間において最終的なチェック段階にある)。 ①及び②については、上記③から⑤を実施する上で必要となるものであり、インターネットによる電子資料を含め、国内外の調査及び論文執筆のための文献・資料を準備できたものと考えている。 これらの事情に鑑みれば、本研究は、おおむね順調に進展していると評価することができるものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度においては、最初に平成26年度の研究成果として、千手正治=冨田信穂「我が国及びアメリカ合衆国における犯罪被害者に対するワンストップ支援の現状:首都圏及びカリフォルニア州における例を参考として」を論文として発表予定である。 また今年度は、引き続き国内外の犯罪被害者支援に関する基本文献の整備及び関連資料の収集・整備を実施することに加え、海外調査における犯罪被害者に対するワンストップ支援(多機関連携を含む)の現状を知ることを目的として、ニュージーランド及び大韓民国におけるワンストップ支援センターとしての機能を有する機関及び関連機関、さらには現地の学者等を訪問する予定である。その際においても、半構造化面接法による調査を実施するものとし、併せて必要に応じて現地の諸点及び図書館において文献・資料等を購入・複写する予定である。なおニュージーランド及び大韓民国における調査結果についても、論文もしくは研究ノートとして発表する予定である。 学会発表としては、研究代表者が平成27年6月6日にニュージーランド学会において、「ニュージーランドにおける犯罪被害者に対するワンストップ支援としての警察及び民間支援団体との連携(仮)」として発表予定である。本発表において会員から様々な指摘を受け、これを基にニュージーランドにおいて有意義な調査を実施したいと考える。 なお本年度より研究分担者が本学学長に就任しため、ニュージーランドにおける調査について研究分担者に代わり研究協力者(綿貫由実子講師)と共に実施するなど、本研究上における研究分担者の負担軽減措置をとることとする。その分研究協力者の負担が増加することになるが、研究協力者には既に事情を説明し、了解を得ているので、当初の計画通りに実施することができるものと考えている。
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Causes of Carryover |
昨今の円安に伴い、平成26年度の米国調査における海外渡航費が当初の予定より増えたため、平成27年度においても同様の問題が発生することを危惧した。とりわけ平成27年度は、ニュージーランドと大韓民国の2か国を訪問するため、平成26年度以上に深刻な問題になる可能性があると考えた。 以上の理由により、平成26年度においては、27年度以降の研究計画に支障が発生しないよう、計画的に10万円程度を残したものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現時点における概算においても、平成27年度の渡航費用が上記2か国70万円以上かかる見通しであるので(今後の為替相場によってさらに変化する可能性もある)、これを補てんするためにも平成26年度未使用分について、上記計画どおり今年度の海外渡航費用に充当したいと考える。
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