2015 Fiscal Year Research-status Report
刑事司法における再犯リスク概念の明確化と評価方法の適正化に関する比較法的研究
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26380099
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
森久 智江 立命館大学, 法学部, 准教授 (40507969)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | リスク評価 / リスク管理 / 犯罪行為者 / 社会復帰 / 自律性 / 障がい / 福祉 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、平成26年度2月に、オーストラリア・ビクトリア州のメルボルン大学からStuart Ross博士とFrank Lambrick博士を招いて京都で実施した「福祉と司法の連携における『リスク評価(Risk Assessment)』と支援」と題したシンポジウムにおける講演記録を基に、日本における示唆についてもまとめ、公刊を行った。オーストラリアにおける犯罪をした人のリスク評価に対する考え方が、飽くまでもセルフマネジメントを軸とした自律性を支援する考え方を基礎としており、他律的な再犯防止とは異なることを再確認した。 また、平成27年度10月には、オーストラリア・ビクトリア州で開催された、犯罪をした人の社会復帰支援を行う民間団体ACSO主催の、研究者・実務家によるカンファレンスにおいて、日豪比較による司法福祉の現状と今後に関する共同報告を行った。その準備過程において、8月にはACSOより実務に携わるマネージャーを招聘し、刑事司法制度におけるワンストップサービスのあり方に関して、東アジア法社会学会議における共同報告を実施した。犯罪行為者自身の自律性を軸としたセルフマネジメントにおいて、民間の支援事業者がいかに多様な工夫や試行錯誤を行いながら支援メニューを発展させてきているのかを、実践家自身の説明をもとに検討することができた。 日本においては、主に障がいのある犯罪行為者に対するソーシャルインクルージョンの視点に基づいた支援のあり方を論じることで、前述のようなリスク評価のあり方について検討を行った。その成果の一部は、森久智江「障害のある犯罪行為者への支援とソーシャル・インクルージョン(特集「刑事司法におけるソーシャル・インクルージョンの現段階」)」龍谷大学矯正・保護総合センター研究年報5号(2015)52-73頁等において公刊した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
主にオーストラリアにおける経験や、日本で既に進められている、福祉と連携した障がいのある犯罪行為者への支援の状況から、犯罪行為者の社会復帰過程における「リスク評価」及び「リスク管理」は、その過程を含めて、本人自身が関与し、まさに「本人中心(person-centered)」によって行われることで、自律的かつ継続可能な社会復帰を支えるものとなることが明らかになりつつある。障害学における本人の主体性や自律性の支援のあり方を参考にしながら、社会モデルを背景とした「犯罪行為者本人中心のリスク評価・管理」のあり方を、より一般的な理論として共有していくことが必要である。そのための説得的な理論構成を引き続き行っていくこと、また、それを実際に行っている実践の共有を目指したい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は最終年度にあたることから、引き続き、研究において不足している部分の補完及び公刊や発表による研究成果の公表に努める。現在、執筆準備中の原稿に加え、日本の現状に照らして、実務と理論の架橋を目指した共通理解の構築を継続する。 また、本研究のオーストラリアとの研究連携について、さらなる発展を目指していることから、8月にオーストラリア・メルボルンで実施される世界規模の障がい学会への参加や、メルボルン大学を中心としたオーストラリア在住の研究者との日本での研究会を9月に設定する予定である。
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Research Products
(5 results)