2015 Fiscal Year Research-status Report
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26380101
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
鮎川 潤 関西学院大学, 法学部, 教授 (90148784)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 政治家 / 犯罪 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず第一に、平成27年に統一地方選挙が行われたが、研究代表者はある選挙区の選挙管理委員会委員を平成23年まで8年間にわたって務め選挙の実施業務を実際に経験してきており選挙活動についての知識を持っているため、選挙時の公職選挙法違反に関する情報を収集するとともに、選挙活動を行った(元)議員候補者から選挙活動における公職選挙法違反について聞き取り調査を行った。また、選挙運動の事務局長からも聞き取り調査を行った。 第二に、選挙時に選挙違反の摘発と、候補者の当選落選との関係について、さらにそれが(現)政権(や政権交代)にどのように関係するのかについての候補者をターゲットとした調査は、候補者のほうが躊躇したり、容易ではない面があることが判明したため、むしろ選挙違反について無罪判決を出した複数の元裁判官に聞き取り調査を行った。これらの裁判官から実直な意見を聴けたのは非常に有意義であった。 第三に、日本の選挙制度・政治制度と選挙違反・政治犯罪との関係について、国際比較の観点を持って客観的に把握するために、英国ケンブリッジ大学犯罪学研究所の准教授とオーストリア・ウィーン大学の教授から聞き取り調査を行った。とりわけ、前者からはアフリカにおける政治腐敗とその防止策について聴取することができたとともに、後者からは国際的な観点から見たオーストリアの(元)政治家の犯罪について聴取することができ、非常に興味深かった。 なお、これらの海外出張調査については、平成28年3月末の帰国というスケジュールで行ったことから、平成27年度の予算に盛り込んではいたものの、平成27年度分の費用として支出することには間に合わなかったため、これらに相当する額を平成28年度に繰り越し、平成28年度分から支出することとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書や今までの報告書に記したように、本研究では、幸運なことに元国会議員で大臣経験もある信頼できる人物の協力を得ることができたことにより、本研究を順調にスタートさせ、調査協力者を得たり、研究の方向への指針を得ることができた。 国会議員に関しては、選挙時の重大な犯罪である買収によって、選挙総責任者が有罪判決を受けたケースについて聞き取り調査を行うとともに、地方自治体の議会の元議員や首長選挙候補者の事務局長からも聞き取り調査を行うことができた。 海外調査においては、スウェーデンにおいて選挙活動を参観するとともに、スウェーデン(ストックホルム)、英国(ケンブリッジ)及びオーストリア(ウィーン)の犯罪学者等から情報収集することによって、他の先進国と比較して日本においては選挙活動が非常に厳しく制限されていることが判明し、違反者よりもむしろ法律自体の問題点についても考察することが必要であることの認識に至った。この認識に基づいて、日本の公職選挙法について違憲判決を下した元裁判官への聞き取り調査を行うことができた。また、これらの異なる国々における政治犯罪に関する知見を得た。 とりわけ、ケンブリッジ大学犯罪学研究所の研究者からは、アフリカにおける政治犯罪とその防止策についても説明を受けることができ、当初、可能な限り本研究でカバーすることを希望したアフリカにおける政治家の犯罪についての手掛かりを得た。それは、政治領域を含めて、日本を中心とした人権に関する認識の特徴に着目して探究していた本研究代表者の視野を広める気づきを与えるものとなった。 さらに政治家による贈収賄に関しては、ヨーロッパにおける状況と対策に関する文献を購入して研究を進めるとともに、わが国における地方自治体の首長の収賄事件について、具体的に裁判の実例を通じて検討を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に、国会議員の選挙、地方自治体の議員の選挙、地方自治体の首長の選挙という3つの異なるレベルにおける選挙に関して、選挙違反等に関する聞き取り調査を平成26年度と平成27年度に行ったが、さらにこの種の調査を発展させることを試みたい。 第二に、日本の選挙制度・政治制度と選挙違反・政治犯罪との関係について、国際比較の観点を持って客観的に把握するために、アメリカ合衆国、英国、スウェーデン、オーストリア等の国との比較調査または比較研究を引き続き行い、わが国との相違点をより明確にするとともに、政治家の犯罪に関して、わが国では犯罪とされるにもかかわらず議会制民主主義を培ってきた成熟した先進国では許されている行為について、あるいはその逆のケースについての情報収集を行い、考察を深めこととしたい。この検討の一環として、平成27年度に、わが国の公職選挙法に関して違憲判決を下したり無罪判決を下したりした元裁判官に対して聞き取り調査を行ったが、これらの結果を踏まえて、それを掘り下げて検討することとしたい。 第三として、政治家の贈収賄に関して、平成26年度に全国的に注目を集めた地方自治体の長の地方裁判所での事件の調査を行ったが、平成28年度はこの事件の高等裁判所のおける控訴審での判決が下されることとなっているので、その結果を得て、考察をより深めたい。 さらに、第四として、政治家の最大の犯罪とは人道に反する行為であり、国際刑事裁判所へ訴追されるような犯罪ということができる。この視点をより積極的に取り入れるために、可能であればこれらの事件が発生したアフリカにおける現地調査を行いたいと考えている。最後に、以上四つのポイントを総合して、政治家による犯罪を手掛かりとして、わが国の代議制に基づく民主主義のさらなる発展に寄与する考察と提言を行いたいと考える。
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Causes of Carryover |
平成27年度の研究として、当初より計画されていながら教育等のために時間がなかなか得られなかったヨーロッパへの海外調査出張を、春休みでようやくまとまった時間が得られた卒業式の後の平成28年3月下旬に行い、帰国は平成27年度終了間際である平成28年3月末となったため、平成27年度予算からではなく、その相当額を繰越した平成28年度予算から執行することとしたため、未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年3月末に行ったヨーロッパへの海外調査出張旅費に充てる。
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Research Products
(1 results)