2014 Fiscal Year Research-status Report
客観的な事実認定をめぐる当事者および裁判所の機能と役割
Project/Area Number |
26380104
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
田村 陽子 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 教授 (60344777)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 事実認定 / 証明度 / 民事訴訟 / 証拠の優越 / 高度の蓋然性 / 解明度 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度の成果については、当該年度の目標であった「事実認定の構造」の解明および「証明のメカニズム」について、マクロ的視点とミクロ的視点からの総合考慮が重要であるとの考えに基づいて考察した。 具体的には、ミクロ的な事実の推認構造について、あまり意識されてこなかった「解明度」(審理に積み重ねられる証拠の質と量の度合い)との関係から考察し、マクロ的な視点については、当事者の語る「合理的なストーリー」の整合性の観点から、具体的な証拠で解明できない事実についても、合理的なストーリーの「スジ」から事実を推認する構造について検討した。 その結果、従来、「証明度」という概念で考えられていたものに、狭義の証明度(審理の最終段階で必要な事実の証明の度合い)と、「解明度」(審理の途中段階で、物理的な証拠の提出による事実の解明の度合い)とを区別し、考察する必要があることが明らかになった。これにより、「真偽不明」の意味についても、世の中に存在する証拠の量が足りないのか、それとも、証拠の量はあるが、積極的証拠と消極的証拠が拮抗し、真偽が判明しないのかについて区別する必要があり、前者の場合については、法と経済学的観点から、訴訟にかけるコストベネフィットを考えると、ある程度の証拠が出そろったところで、判断に踏み切る必要があることも分かった。 したがって、裁判を行う裁判官の意識として、このようなマクロ的な視点とミクロ的な視点の両方からの総合的な交互考察が必要であることが一つの帰結として導かれた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本での準備段階としての事実認定の構造の解明および証明のメカニズムについては、一定の結論を出すことができた。また、今年度の比較法研究の予定としていたアメリカの議論状況よりも興味深いイギリス系のコモンウェルス諸国とりわけシンガポールとオーストラリアの状況について新たに知見を得る機会に恵まれたので、当初の計画にはなかったが、実地調査を行ったため。アメリカの調査は次年度以降になった。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き、計画の順番通りに、平成27年度も研究を行う予定である。 アメリカとドイツなどの比較法的研究を今後は進めていく予定である。 アメリカについては、法と経済学的観点が入る研究が多いという特徴があるので、そのあたりを追究することにしたい。ドイツについては、日本よりも保守的な発想をとっていることが予想されるが、その理由については興味深いので調査していきたい。 ドイツと同じ大陸法でありながら、数学的・統計的アプローチが盛んな北欧法学についてもできれば調査したいと考えている。
|
Causes of Carryover |
当該年度に予定されたアメリカへの出張が次年度に回された。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
アメリカ出張に使用する予定である。
|