2015 Fiscal Year Research-status Report
ABLにおける流動資産担保の債務者危機時における効力のあり方に関する研究
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26380105
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
池田 雅則 名古屋大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (20261266)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 流動財産担保 / 集合動産譲渡担保 / 集合債権譲渡担保 / ABL / 事業再生 / 倒産法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度においては、集合動産譲渡担保や集合債権譲渡担保などの流動財産担保がどのような効力を有しているのかについて、ドイツにおける債務者危機の時点やその後の経営の立直し、さらに進んで債務者再生手続きの局面におけるABLの用いられ方など、ドイツ法の下でのABLにおける流動財産担保の位置づけについて、ドイツ法における判例および学説を素材とする整理検討を、平成26年度に引き続き行った。 また、この検討とあわせて、当初計画していたとおりに、ドイツ法の下における債務者危機時やその後の経営立直し、さらに進んで債務者再生手続きの局面におけるABLの用いられ方などの状況を確認し、ABLにおける流動財産担保がドイツ法の下においてどのような法的位置づけとなっているのかについて、担保権者や担保設定者、その他の利害関係者間における利害調整などの観点から把握するために、ドイツにおける調査を実施した。 これらの作業から、ドイツ法においては、そもそも倒産法制の下においてわが国とは異なり、債務者再生手続きの比重がそれほど大きくなく、原則として倒産時には債務者の財産を清算することによって倒産処理が行われていることを確認した。このため、債務者再生手続きにおける流動財産担保の効力のあり方という形で、ドイツ法において問題が捉えられているのではかならずしもないことが明らかになった。しかし他方で、債務者の危機時点に限らず、二重に譲渡担保がなされた場合に、先行する譲渡担保と後行する譲渡担保の効力をどのように調整するのかについては、学説を中心に議論がなされていることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画では、平成27年度は、平成26年度に引き続き、ABLを検討するための基盤的な知識の獲得を行うことを計画しており、この点は文献調査などによる知見の獲得はおおむね順調に進展している。また、本年度は、ドイツにおける債務者危機時やその経営の立直し、さらに進んで債務者再生手続きの局面におけるABLの用いられ方や、ABLにおける流動財産担保のドイツ法における位置づけについて関係当事者間での利害調整などの観点から、ドイツにおける現地調査を実施することになっていたが、この現地調査によって、たしかに債務者再生手続きの比重が小さいことが明らかになり、その点でドイツ法からの直接の示唆を獲得することはできなくなったものの、二重譲渡担保における効力のあり方についてわが国とは異なる問題の処理がドイツ法において示されており、ここで示された解釈論の射程がどこまで及ぶのかを検討することで、実質的には経営危機時あるいは債務者再生時に複数の資金供給者の利害調整がどのように行われているのかに関する示唆を得ることができると考えられるため、その意味において、おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度においては、平成27年度に引き続きドイツにおける海外調査を予定しており、土井法におけるABLの用いられ方や、ABLにおける流動財産担保のドイツ法における法的位置づけなどを把握することを予定している。とりわけ、昨年度の調査において判明した債務者危機時やその後の経営立直し時における資金供給者間の利害調整が実質的に二重譲渡担保における相互の効力をどのように調整するのかという問題に集約されているという点に焦点を合わせて、どのような利害調整がなされているのかといった点などについての把握に努めることにしている。 また、その他、ABLを検討する上で必要とされる基盤的な知見の獲得を引き続き測るとともに、ドイツ法における流動財産担保の実行方法や倒産管財人との利害調整のあり方についての検討を行うために、必要な範囲での文献調査などを予定している。
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