2017 Fiscal Year Annual Research Report
Behavioral Economics and Securities Regulation
Project/Area Number |
26380106
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
木村 真生子 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 教授 (40580494)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 行動経済学 / 認知バイアス / 投資者保護 / 消費者保護 / プロダクト規制 / ナッジ |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度は、①投資者の限定合理性を前提とした場合に、現行の適合性原則の考え方に矛盾や限界が生じないかどうかという点について主に調査・研究を行った。 このうち①については、EUの金融・資本市場規制のであるMiFIDⅡが行動経済学の知見を参考にしながら適合性原則の考え方に修正を加えたことを確認し、協議文書の内容を分析した。これによれば、顧客の認知バイアスを考慮に入れずに行われた適合性のチェックは信頼性に欠ける。また、顧客の投資適合性を図るためのリスク許容度についても、個別顧客の心理的要因や感情的要因を考慮する行動ファイナンス理論の考え方に基づいて行われる必要がある。このため、投資勧誘時における投資者の適合性のチェックでは、認知のゆがみを防ぐような質問がなされなければならない。つまり、顧客の属性に関する情報収集が自信過剰バイアス等に左右されないかたちで適切に行われなければ、顧客の本来の属性を正確に把握できない。これは将来の投資勧誘をめぐる紛争の要因ともなり得る。 なお、研究期間全体を通じて、本研究では次のような結論を得た。伝統的な証券規制の基礎理念の根底には、「リスクを覚悟した投資者ならば自由に取引をすればいい」という考え方がある。しかし行動経済学の知見に基づいた新たな証券規制は投資者を「金融消費者」と捉えた上で、心理的バイアスに陥りやすい投資者が危険な投資をしないように介入をすることが、投資者保護ひいては効果的な競争を市場にもたらす上で重要だと考え始めている。また、一定の投資商品に課されるProduct Intervention(商品規制)を始めとする規制手法は、情報の非対称性の解消という従来の方法ではなく、人の限定合理性の影響を緩和するという新たな方法に依っている点に大きな特徴がある。研究成果は現在論文として纏めており、平成30年度に複数公表予定である。
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