2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26380107
|
Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
杉山 悦子 一橋大学, 大学院法学研究科, 准教授 (20313059)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | DIPファイナンス / プレDIPファイナンス |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、日本の法的倒産手続におけるDIPファイナンスや、私的整理の段階で提供されるプレDIPファイナンスの実情について、公刊された文献から明らかになる情報を整理した。それとともに、アメリカ連邦倒産法におけるDIPファイナンスの歴史的発展やこれに対する学会や実務からの評価を調査し、それらをまとめた結果と、そこから得られる解釈論、立法論的な示唆を公表した。 日本では、法的倒産手続開始決定後の融資は、財団債権、共益債権として扱われ、優先弁済を受ける。これは、一般には倒産者に対する融資を助長するためであるといわれる。他方で手続開始前の私的整理で提供された融資は、通常の倒産債権として扱われることになるが、実務上は優先的に弁済を受けられるような工夫がされている。アメリカでは、融資を助長するために、融資者に対しては、最優先順位での弁済を受ける権利を認めるとともに、既存の担保権者よりも優先する地位まで認められてきた。ところが、融資者保護が過熱化すると、債権者平等が害されるのみならず、債務者の非効率な清算も引き起こされる。そこで、歪んだ投資を是正するために、融資者の地位に制限を加える旨の主張も見られるようになった。日本ではDIPファイナンスの過熱化という問題は現在のところ生じてはいないが、アメリカでの反省を踏まえ、倒産裁判所による融資条件の監督が必要不可欠になることを明らかにした。 加えて、平成26年度は、債権調査を巡る問題について調査、執筆をするとともに、倒産における契約のコベナンツの変容や倒産法的公序の問題について、シンポジウムで報告をした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度においては、法的倒産手続が開始された債務者に対する融資であるDIPファイナンスや、法的倒産手続が開始される以前の私的整理の段階において債務者に提供されるプレDIPファイナンスに関する理論的な問題、実情について、日本における学説の発展を整理するとともに、アメリカにおける学説や判例の発展に関する資料を収集する作業に加えて、これらを一通り整理した結果を公表することができた。これにより、今後個別に深めていくべき論点、発展させていく論点を整理することも可能となった。 加えて、これらの調査を通じて、今後の日本におけるDIPファイナンスやプレDIPファイナンスの規律のあり方について、解釈論のみならず、立法論としての示唆を提示することができた。これにより、法的倒産手続やそれ以前の私的倒産手続において金融機関が倒産者に対して融資をする際の事後的な規制のあり方を見出すことができた。 金融機関が債務者に対して融資をする場合や、融資をした後の行動を考えるに際しては、債務者が倒産した後のみならず、倒産する前の行動についても検討する必要がある。これらの問題については、実務家の勉強会やシンポジウムを通じて、契約の中のコベナンツが倒産手続において効果を有するのか、また、修正を加えられるのかといった問題を議論、発表することを通じて、融資契約に含まれるコベナンツの扱いを考える際の検討材料を得ることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成26年度において、法的倒産手続や私的整理の段階において金融機関が債務者に対して提供する融資について、倒産手続の場面においてどのように規制を加えるべきかという視点から、これまでの議論状況の一通りの整理を行い、問題解決の方向性を発見したので、平成27年度以降は、この整理の段階で発見された個別の応用問題の分析を掘り下げる。 また、倒産手続における金融機関に対する規律のあり方が、倒産手続前の金融機関の行動、たとえば契約作成上にどのような影響を与えているのか、倒産手続前に締結された契約条項が倒産手続上どのような変更を受けるのかという視点から、日本で実務上問題として挙げられている様々な問題について、従来の学説や判例などの文献調査、及び実務家や研究者との意見交換を通じて、解決の方向を探る予定である。その際には、比較法的な分析も必要となると思われるので、アメリカにおける金融機関の融資の実情と倒産手続における問題点を引き続き調査するのに加え、大陸法の倒産手続における金融機関の地位について、並行して調査を開始することとする。
|
Causes of Carryover |
平成26年度内に公刊されなかった書籍、既刊の雑誌で手に入らなかったものがあったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
雑誌社の担当者と平成26年度末に連絡がついたために、在庫調査を依頼して購入し、書籍も公刊され次第購入手続を行う予定である。
|
-
-
-
[Presentation] 従来型契約と倒産法2015
Author(s)
加々美博久、辺見紀夫、三森仁、杉山悦子
Organizer
東京三弁護士会倒産法部シンポジウム
Place of Presentation
弁護士会館(東京地千代田区)
Year and Date
2015-03-25 – 2015-03-25