2014 Fiscal Year Research-status Report
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26380108
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
合田 篤子 金沢大学, 法学系, 准教授 (50361241)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 親権 / 未成年後見 / 家庭裁判所 / 財産管理 / ドイツ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、親権者や未成年後見人の適正な財産管理権行使を担保する一つの制度として、家庭裁判所による許可制度の導入の是非につき、具体的検討を行い、その検討を通して、家庭裁判所の監督義務の内容や具体的な監督の在り方についても研究を行っていくことである。 平成26年度は研究実施計画に従い、まず、金沢家庭裁判所に赴き、主に民法859条の3(成年被後見人の居住用不動産の処分についての家庭裁判所の許可)に関する裁判所での実際の運用状況や、家庭裁判所が許可を与えることの実効性および問題点について、ヒアリング調査を行った。 次に、当初、平成27年度に予定していたドイツへの調査を平成27年3月に実施した。ドイツでは、親権者、未成年後見人、世話人に対する監督は家庭裁判所が担っているが、重要かつリスクを伴う財産管理につき許可を付与する職務を担っているのは裁判官ではなく、司法補助官(Rechspfleger)であることから、裁判官のみならず、司法補助官とのインタビューも実施した。その結果、ドイツでは、親権者や未成年後見人らによる横領事件は稀であるとの回答が得られるなど、財産管理権者に対するドイツ家庭裁判所の監督体制やその状況につき、確認することができた。さらに、現在、ドイツでは、未成年後見制度の改正の動きがあり、たとえば、家庭裁判所の許可事項の見直し(BGB1821、1822条の各号の現代化)や、後見監督制度の廃止が案として提起されており、これら改正案の内容に対する研究者、実務家らの意見を直接、聴くことが出来たのも有意義であった。 以上の通り、平成26年度に実施した調査からは、今後、わが国の家庭裁判所の監督義務の内容や具体的な監督の在り方について検討を行っていく上でも、大きな示唆を得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度に予定していたドイツの判例・学説の分析、検討については、決して順調な進捗状況とはいえない。しかしながら、日本の家庭裁判所への調査や、当初、平成27年度に予定していたドイツでの調査を26年度に前倒しで実施することができ、その結果、研究の方向性が明確になった点では、十分に研究目的を達成することができたともいえる。以上のことから、おおむね順調に進展しているとの自己評価を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、平成26年度に実施した日本の家庭裁判所でのヒアリング調査や、ドイツでの裁判官、司法補助官、弁護士、研究者らからのヒアリング調査の結果につき、整理・分析を行う。その上で、親権者および未成年後見人らの財産管理権を規制する方法として、家庭裁判所の許可を得るとの制度の意義や問題点についてさらに検討を深めるためにも、当初、平成26年度に実施予定であったドイツの裁判例や学説の詳細な分析・検討を行う予定である。その際には、許可制度(BGB1821、1822条等)の現代化を提案するドイツ未成年後見制度の立法動向にも注視していきたい。
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