2016 Fiscal Year Annual Research Report
The Family Court's Supervision of Property Administrator
Project/Area Number |
26380108
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
合田 篤子 金沢大学, 法学系, 教授 (50361241)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 民法 / 財産管理権 / 家庭裁判所 / 親権 / 後見 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、親権者や後見人の適正な財産管理権行使を担保する一つの制度として、家庭裁判所による許可制度の導入の是非につき、具体的検討を行い、その検討を通して、家庭裁判所の監督義務の内容や具体的な監督の在り方についても検討することである。平成28年度は実施計画に従い、前年度までの研究成果をまとめ、論文公表および研究会報告を行った。 研究成果の概要は次の通りである。 後見人等による不正行為対策が喫緊の課題とされる中、許可制度の第一の意義は、事前的な不正行為対策として機能しうるという点である。第二の意義は、家庭裁判所が許可審判という形で関わることによって、後見人の職務執行における責任の所在が明確化し、ひいては取引の安全にも資する点である。特に、実務上、家庭裁判所が後見人からの相談に対して一定の助言をしているという現状を踏まえると(東京高判平成17年1月27日判時1909号47頁、東京家裁後見センター「成年後見人・保佐人・補助人Q&A」等参照)、被後見人に不利益が生じた場合の責任の所在が問題となる場面も想定され、家庭裁判所の助言を「許可」とし、法的性質を明確化しておくことには一定の意義があるように思われる。 一方、許可制度の導入には問題もともなう。近年のドイツの未成年後見法の改正議論の分析からは、きわめて広範かつ複雑な事項を許可の対象とすることの弊害も明らかとなった。また、家庭裁判所の負担増の問題も重大である。これについては、ドイツにおいて、主に司法補助官が許可を付与する職務を担当していたことを参考にすれば、わが国における裁判所書記官の人員や職務範囲を拡大するという方向性もみえてくる。 成年後見制度利用促進の方針が打ち出される中、今後は許可制度の導入以外にも、家庭裁判所の機能の分化の可否、家庭裁判所以外の監督機関の設置の要否も含めた検討が必要になってくるかもしれない。
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