2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26380118
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
榊 素寛 神戸大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (80313055)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | リスク / 巨大リスク / 保険 / 民事責任 / 航空法 / テロ / 不法行為 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究2年度目である平成27年度は、研究計画に従い、前年度からの継続研究として巨大リスクの一例としての航空機事故に関する研究を完成させるとともに、各種の民事責任と保険の関係に関する考察を中心的に行った。具体的には以下の通りである。 第一に、航空機事故に関する研究においては、平成27年度日本空法学会において報告を行うとともに、学会誌「空法」に論文を投稿した。ここでは、航空運送人の責任を航空運送人と旅客のリスク配分の観点から、航空機運航者の責任を不法行為法の目的の観点から、それぞれ基礎付けたうえで、現在の大きな問題であるテロについての理論的問題を考察するとともに、条約のリスク配分や保険の供給との関係を分析した。 第二に、民事責任の有無と各種の私保険・社会保険・社会保障の関係を研究した。ここでは、民事責任の有無とそれを前提とした保険や社会保障との関係、とりわけ、全ての損害が、責任保険とファーストパーティ保険でカバーされる完全保険の達成を理想な状況と仮定した場合に、その実現可能性と阻害要因を考察しており、民事責任の有無と保険の関係の一般論の他、原子力損害、自動車事故、運送、自動運転、不法行為法の新たな問題類型を具体的な検討素材として、保険の供給、付保の機会、無保険状態の阻止、民事責任や社会保障による被害者救済の限界等の観点から研究を行った。 第三に、経済学及び実務の見地を取り入れながら、共同研究に着手した。ここでは、法学・経済学・実務の異なるバックグラウンドを持つ研究者が共同で、様々なアプローチから保険の研究を開始しており、本研究課題との関係でも有益な研究を開始するとともに、各分野で異なる問題関心の接合を試みつつ、海外の学会での発表を意識して活動を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究2年度目である平成27年度に、日本空法学会において学会報告を行うとともに、学会誌に論文を投稿した。さらに、平成28年度中の論文公刊を予定しており、概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に、平成27年度までに行った、抽象性の高い研究である民事責任の有無と保険や社会保障の関係に関する研究を、具体的な解釈論や制度設計の議論に落とし込む。 第二に、複数の具体例から、より抽象性の高い、一般的な枠組みにフォーカスした研究を行う。 第三に、共同研究を進め、とりわけ海外の研究者や実務の関心と接合する研究を進める。 このうち、第一及び第二は、排他的ではなく、並行することを現時点では考えているが、残り2年間の期間から、一方に絞る可能性がある。この、絞り込むか並行するかについては、第三の共同研究において、誰を読者と想定して、インパクトのある研究を行うかとも関係するため、研究の進展に応じて決める予定である。
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Causes of Carryover |
平成27年度は、ほぼ当初計画通りの支出であり、平成26年度に生じた、研究順序の入れ替えに伴う前年度の繰り越し金相当額がほぼ全額繰り越されているため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現在執筆中の論文が終了した後、初年度に行う予定だったリサーチに用いるか、遂行中の共同研究次第では、海外の学会での報告等を検討する。
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