2015 Fiscal Year Research-status Report
倒産手続における目的物の変動した債権の効力貫徹に関する研究
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26380121
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
直井 義典 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 准教授 (20448343)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 質権 / 実行 / 倒産手続 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は質権の目的物に変動が生じた場合の質権の効果について検討することを通じて、設定者倒産時の担保権の処遇に関する検討を行った。 第1に、フランスにおける動産質権の実行手続についての分析を行った。わが国では担保権実行手続は担保目的物の変容として理解されることが少なくが、フランス・ドイツにおいては担保権実行手続が物的代位の一種として理解されることに鑑み、動産質権実行手続を担保目的物変容の重要な一局面と位置付けて検討を加えたものである。動産質権実行方法としては民事執行手続によるほかに質権者への質物の帰属命令による方法が、フランスでは認められる。特徴的なのは民事執行手続においても競売が実施されるとは限らず、任意売却も許されることである。質権者への質物帰属も認められることにもかんがみると、フランスにおいては、総じて、裁判所の監督下にありながらも質権者が主体となって質権を実行することが目指されていることが明らかとなった。もっとも、こうした方法が設定者の倒産手続開始後においても認められるわけではなく、商法の規定によって執行手続は中断・禁止され、裁判上の清算手続に入った場合に限り質権者への質物帰属が認められる。このように再生型の倒産手続下では動産質権実行による目的物変容は停止されることとなる。 第2に、遺言による質権設定が許されるのか、許されるとして質権設定後かつ遺言の効力発生前に目的物に変動が生じた場合は質権の効力はどうなるのかを検討した。その結果、質権設定は要物契約であるという伝統的通説には疑問があり質権設定契約自体の効力が認められるべきこと、単独行為である遺言の場合であってもこれと同様であること、そして目的物の変動については民法999条・1001条が適用されるべきことを主張した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フランスにおける権利質、特に金銭の担保化において質権の一般論がいかなる変化を見せるのかを検討する基礎作業となるべき、動産質権の実行方法に関する検討を行っており、比較すべき対象についてはすでに検討がなされたものと言える。 また、集合物に限定されないが遺言によって質権を設定した後にその目的物に変動が生じた場合についての検討を加え、民法999条・1001条といった物上代位規定がここにおいて利用可能であることを示すことで、担保目的物の変動論と物上代位論との類似性は示されている。
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Strategy for Future Research Activity |
第1に、フランスにおける権利質の実行方法について動産質の場合と比較しながら検討を加える。特に金銭については不特定物の最たるものであることから担保目的物であることの立証の点で特定動産質と大きく異なるものと考えられる。 第2に、倒産手続における不法行為債権の処遇について目的物流動型の担保の場合と比較しながら検討することを通じて、現段階での倒産手続内での担保権とその他の権利との処遇の差異を明らかにする。その際、保険法22条に見られるような法定担保権を付与される権利の特質を明らかにし、担保を付与する明文規定がなくても倒産手続内で優先的な扱いをすることができないかを検討する。
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Research Products
(2 results)