2014 Fiscal Year Research-status Report
必要的共同訴訟人間の牽制権の保障に関する歴史的・比較法的研究
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26380122
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
鶴田 滋 九州大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (90412569)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 必要的共同訴訟 / 牽制権 |
Outline of Annual Research Achievements |
2014年度においては、次の研究を行った。 第一に、前年度までの研究課題であり、今年度の研究課題のための前提となるテーマである「共有者の内部紛争における固有必要的共同訴訟の根拠と構造」についての論文をまとめ、2015年3月に有斐閣より出版された伊藤眞先生古稀祝賀論文集において公表した。 第二に、今年度の研究課題の前提または周辺に関わる課題について、研究をまとめた。 まず、類似必要的共同訴訟の成立要件と深く関わる既判力の主観的範囲の拡張の論点のうち、最も議論の多い「口頭弁論終結後の承継人への既判力拡張」に関する研究を行い、2014年秋に九州大学で開催された民事手続研究会で報告の上、2014年3月に九州大学の紀要である法政研究に論文を掲載した。 次に、必要的共同訴訟の手続規律を準用する独立当事者参加に関する最近の判例(最高裁平成26年7月10日第一小法廷決定裁判所時報1607号2頁)について、福岡地方裁判所で開催された福岡民事訴訟法判例研究会にて報告をした。ここでは、独立当事者参加訴訟では、通常では、既判力の拡張されない第三者が独立当事者参加をし従前の当事者の訴訟を牽制する権能を得ることと、参加人自らが請求を定立すべきこととは密接な関係があることを主張した。 最後に、固有必要的共同訴訟における本案と訴訟要件の問題、すなわち、実体適格と訴訟追行権の問題について、日独の議論状況を紹介した研究を行い、その中間的な成果を、2015年3月に九州大学で開催された民事手続研究会にて報告した。この研究を通じて、固有必要的共同訴訟において共同訴訟人になるべき複数の者が共同して訴訟追行権を有するのはなぜか、また、訴訟追行権を有する複数の者が相互に牽制する権能を付与されているのはなぜかを明らかにすることができると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
次の二つの理由が挙げられる。 第一の理由として、研究課題の前提または周辺に属するテーマに関する日本法の状況を研究論文にまとめることができたことをあげることができる。これらの研究により、必要的共同訴訟の手続規律を理解するために、より幅広い知識を得ることができたと考える。 第二の理由として、訴訟追行権と実体適格に関する日独における学説の展開をある程度知ることができたことがあげられる。訴訟追行権を複数の者が共同で有する場合の手続規律を知るためには、ある当事者に訴訟追行権が帰属する根拠や、その当事者に帰属した訴訟追行権の内容を理解することが不可欠であり、これらの点を知る手がかりを得ることができたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度は、2014年度に引き続き、訴訟追行権が複数の当事者に帰属する場合の手続規律がどのような理由からどのような規律になるべきかを知るために、訴訟追行権概念を、他の隣接概念と比較することにより、正確に理解することを、日独の文献を精読することを通じて行いたい。それと平行して、必要的共同訴訟の手続規律に関する日独の議論状況を正確に把握する作業も行いたい。これらの作業により、2016年度における研究のまとめの作業につなげることとしたい。
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Causes of Carryover |
2015年4月より大学を移籍することが決まったため、これまで備品として購入していた洋書を購入できなくなったため。すなわち、2014年度中に九州大学の備品として洋書を購入しても、その年度末には、大阪市立大学への譲渡の手続をとらなければならず、その煩雑な手続をすることをためらったために、洋書の購入を次年度に回すことにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2014年度に購入しなかった洋書を重点的に購入する予定である。また、本比較法研究の比較対象国であるドイツへも、研究上必要があれば出張する可能性があるため、その旅費にも使うことがある。
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