2014 Fiscal Year Research-status Report
新たなグローバル化社会における動態的な担保取引法秩序の形成に向けた基礎理論の構築
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26380126
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
片山 直也 慶應義塾大学, 法務研究科, 教授 (00202010)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 一般的法原則 / 例外 / 活用 / 経済的所有権 / 充填抵当権 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、わが国の法律学において未だ十分に意識されていない法認識論のアプローチから、「一般法原則」を措定し、それを基礎に動態的かつ重層的な法形成を行うという実践法学方法論の導入を試みるものである。本年度はこの総論的な課題について、片山直也「法典と一般的法原則―法秩序の重層構造と動態的法形成―」岩谷十郎=片山直也=北居功編『法典とは何か?』(慶應義塾大学出版会・2014年・65-78頁)を公刊するとともに、フランス・パリ第10大学(ナンテール)で開催された日仏共同シンポ「新たな法源に向けて」において、「日本私法における一般的法原則と例外」として報告を行い、日仏で問題意識を共有した。 次いで、担保の基礎理論に関する各論研究としては、初年度の課題である新たな「財」概念と「経済的所有権」概念の確立に関して、片山直也「財の集合的把握と財の法」吉田克己=片山直也編『財の多様化と民法学』(商事法務・2014年・123-144頁)および同「『活用(exploitation)』概念と『権能』論」―PFIにおける公共施設等運営権を契機として―」法学研究88巻1号(2015年1月)29-56頁を公刊し、一歩踏み込んだ研究成果を挙げることができた。さらに財産管理の側面から議論を深化させて、3つの側面を統合させ「経済的所有権」論としてまとめる作業に移行する予定である。 さらに、本年度はパリおよびベルギーの研究機関において、両国の担保法制をめぐる調査を実施した。パリでは、パリ第2大学のピエール・クロック教授とともに、充填抵当権に関する法改正の状況を分析研究した。ベルギーでは、ブリュッセル自由大学のエリック・ヴァン=デン=オート教授との議論を通して、ベルギーにおける流動資産担保法の制定に関する知見およびヨーロッパ法という視角からの各国の担保法制の分析という新たな手法を学んだ。今後の研究に反映させたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
総論的な課題に関しては、パリ10大学(ナンテール)でのシンポジウムでの報告の機会を得て、当初予定していたよりも早い段階で、方向性を定めて、各論研究の礎とすることができたのは僥倖であったといえよう。これにより来年度以降の各論研究をより効率的に行うことが可能となった。 また各論的課題については、「財の法」という視角からの科研Aの共同研究の一環として比較法学会および日本私法学会のシンポジウムを企画・参加報告をしたことから、それと関連づけて、本研究の課題についても大幅に進歩させることができた。すなわち、「経済的所有権論」の基礎となる「活用(exploitation)」概念は、収益管理型の次世代担保の構造を解明する上で不可欠の概念であることが明らかになったからである。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、まずは、昨年度からの積み残し作業として、財産管理の視角から研究を進めて、「経済的所有権」論およびその基礎をなす「活用(exploitation)」概念について成果をまとめて、3部作を完結したい。 次いで、6月に開催予定の比較法学会シンポジウム「担保法の国際的動向 ─担保制度の多様性と共通性をめぐる比較研究─」において、フランス法およびベルギー法に関する調査研究の成果をまとめて報告する。 さらに後半は、ケベック法の動向の調査を開始する予定である。英米法の影響を受けたケベック法の「財」や「資産」概念を研究するとともに、収益管理型の担保法制およびそれを支える基礎理論の解明に努めたい。
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Research Products
(7 results)