2014 Fiscal Year Research-status Report
私的整理と法的整理の「統合」―ドイツの「再生準備手続」を手掛かりとして―
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26380129
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
田頭 章一 上智大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (80216803)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 私的整理 / EU倒産法 / ドイツ倒産法 |
Outline of Annual Research Achievements |
2014年度は、2011年ドイツ倒産法改正の経緯と施行後の状況の調査、およびヨーロッパ、アメリカ、日本における私的整理(裁判外の倒産処理手法)に関する情報の収集を中心に研究を行った。10月に実施したドイツおよびEUにおける倒産法制の動向調査では、EUの再建型倒産手続の簡易化・迅速化の動きが強力に進められていることが明らかになり、欧州委員会が2014年中に発した勧告に対する各国回答(その期限は2015年3月末)後に、ドイツ法を含む各国法に新たな動きが予想されることが判明した。そのような新たな動きをにらんで、2014年度に予定していたヨーロッパでの現地調査の一部は2015年度に行うこととした。
わが国における私的整理の諸問題についても、幅広く資料収集、分析等を行ったが、外国での議論と関連するトピックとして、「私的整理に多数決原理を導入できるか」という問題がある。この点は、私的整理と法的整理の統合という観点から基本的な問題であるので、EU諸国における調査の報告を兼ねて、2014年12月に「私的整理への多数決の導入?-論点整理-」と題して、上智大学金融法研究会において研究報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
私的整理のプロセスの重視、また事業再生を容易にするための法的整理手続の構築という動向は、日本、ヨーロッパ、アメリカ等で共通であり、各地域・国において、具体化しつつあることが明らかにできた。法的整理への私的整理プロセスの取り込みという本研究の問題意識は、少しずつ具体化しつつあると考えている。 「研究実績の概要」で述べたように、ドイツ等の国内法における新法の運用状況については、十分な調査が実施できていないが、EU全体での事業再生法制の動きをみたうえで、2015年度に詳しい調査を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、EUにおける企業再生法制の動きを確認しながら、ドイツ法を中心に、ヨーロッパ主要国の事業再生法制の内容と実際の運用の研究を掘り下げて研究していく。引き続き、書籍等による研究を進めながら、現地調査により、実務的な問題点を明らかにし、多角的に諸制度の分析を行い、私的整理と法的整理の「統合」のあるべき姿を具体化していきたい。
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Causes of Carryover |
海外現地実態調査のタイミングに関して、新しい再建手続に関するEU勧告の各国回答期限が到来した後に行った方が適切であると考えたため(「研究実績の概要」参照)、一部次年度資料額が生じた。また、注文済み書籍(洋書)の中にまだ到着していないものがあることも、理由の一部である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の理由から、前年度未使用額は、基本的には現地調査旅費に回す予定である。
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