2015 Fiscal Year Research-status Report
私的整理と法的整理の「統合」―ドイツの「再生準備手続」を手掛かりとして―
Project/Area Number |
26380129
|
Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
田頭 章一 上智大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (80216803)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 私的整理 / 準則型私的整理 / 再生準備手続 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年度の研究成果をまとめる作業とともに、各種研究会での中間報告、さらに研究対象の絞り込み(その一方での拡大)のための作業を行った。概要は以下のとおりである。 (1)わが国の私的整理については、いわゆる「準則型私的整理」に関する理論・実務の展開を跡付けるとともに、私的整理に多数決を導入しようとする動きについての検討を行った。とくに、法的整理の特徴とされてきた多数決原理を私的整理に導入しようとする実務界および学界の一部の動きは、本研究の立場からも注目されるので、これをテーマにした研究報告等を行い、議論を深めた。 (2)外国法の研究については、ヨーロッパ全体で私的整理のメリットを取り入れた利用しやすい(一種の法的)再生手続として注目されているイギリスの「会社整理」手続(Scheme of Arrangement)の運用についても現地調査の対象とし、ドイツの再生準備手続との比較を行った。また、フランスにおいても、債権者を金融債権者に絞って簡易・迅速な事業再生を実現しようとする新制度が設けられたことから、これらについての情報の収集も行った。 (3)ドイツの再生準備手続(「保護傘」手続)については、2011年改正法施行後の運用状況についての実態研究がいくつか発表されているので、その内容について、実施主体であるシンクタンク等への訪問調査を行い、運用についての情報を収集した。また、同手続の法的問題については、大学教授の紹介を得て裁判所での調査の実現に向けて努力したが実現できなかったので、倒産専門弁護士等への聞き取り調査等による調査を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヨーロッパ諸国の法制および米国との比較により、ドイツ再生準備手続およびわが国の状況について、それぞれの位置づけが明確になり、研究のゴールが明確になりつつある。 数回にわたる研究会での報告および専門家との議論を通して、裁判所の手続への関与の在り方(「法的手続」の分類の必要性)、多数決原理が採用できる条件など、今後検討していくべき論点が、明確になりつつある。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、研究最終年度であり、夏前の従前の研究内容と追加論点の確認を踏まえ、夏季休暇中に追加的研究をおこなう。また、秋以降は、公表可能な状況になったテーマから、できるだけ多様な媒体を通じて、順次研究発表していきたい。 このテーマは、国際的にも共通の基盤で議論できるテーマであるといえるので、同様の問題意識を持った外国人研究者との共同での論文作成等も検討したい。
|
Causes of Carryover |
洋書を発注済みであるが、まだ未刊である等のために執行できなかった分である。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
ほぼ予定通り、発注済みの洋書の購入費用に充てる。
|