2015 Fiscal Year Research-status Report
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26380130
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
李 芝妍 東洋大学, 法学部, 准教授 (10439333)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 生命保険 / 被保険利益 / 保険者の同意 / 買取 / 証券化 |
Outline of Annual Research Achievements |
イギリスでは1844年にFoster&Cranfieldによって生命保険の買取事業が行われ、1899年からその流通市場が発達しているが、近年のイギリスにおいて特に生命保険契約の加入率が非常に低い状況となっているが分かった。それは、イギリスのドリューベリー保険会社が国内の有職者1820人(77%が世帯者で48%は子供のいる世帯)を対象に実施した2015年の調査で確認しているが、自動車保険と家財保険の加入率が75%と71%と最も高いのに対し、生命保険の加入率はわずか38%であったことが確認できた。その理由として考えられるのは、社会福祉制度の充実により生命保険契約の必要性を認識する人が少なくなっているからであろう。このような背景があり、イギリスでは加入率の低い生命保険をめぐる流動化などの議論は注目されないことが分かった。 そこで、前年度に実施したアメリカでの議論をより深く解明する必要があると判断した。 アメリカの生命保険協会は2010年2月に買取事業の証券化について反対する立場を明らかにしている。その理由として挙げられたのは、投資者への透明性の欠如、被保険者と投資者に生じうるリスク、保険買取業者が負うことになるリスク評価の責任、などである。これに対し、アメリカ生命保険投資団体は2009年アメリカ下院会議でも既に保険証券化は一般化されており、有用であるとしながら、その証券化を肯定する立場を表明した。これらの議論を検討した結果、日本における生命保険契約の証券化は現状のままでは大変リスクが高くなるのではないかと思われる。 本年度は韓国の先行研究者との共同研究も行っており、その成果を論文として掲載する予定である。研究最終年度に向けて、収集した資料を分析・解明し、次年度以降の研究へつなげる基礎準備も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、イギリスを対象地域として、イギリス保険制度を理解するための文献収集と分析を行う予定しており、本年度はこの計画に沿って、8月にイギリスで資料収集と現地調査を実施した。イギリスでも保険契約は財産であるため、販売、贈与、担保の目的となっていることを再確認することができた。また、2015年2月に行ったアメリカの現地調査で収集した資料を分析した結果、生命保険契約をめぐる悪意的な投資買取事業の問題を詳細に把握できた。当初、高齢化社会に向けて財産的価値のある生命保険契約を流行活用する方面で研究を進めていたが、2年間の研究を通して財産的側面だけでなく、生命保険が有する本来の機能を喪失させない側面での研究が必要だと思ったので、研究最終年度を迎えるまでの研究は全体的に達成できていると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、平成27年度においてイギリスで収集した資料の分析を行い、理論的な解明に努める予定である。そして、その理論的解明を踏まえて、再びアメリカの証券化議論を中心に生命保険証券の証券化について検討する予定である。生命保険契約の流動化をめぐる議論には必然的に保険契約者の変更に対する保険者の同意問題が生じるので、その理論的解明も行う予定である。その上、最終的には研究成果をまとめて,論文として公表する。
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Research Products
(3 results)