2014 Fiscal Year Research-status Report
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26380133
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
大澤 彩 法政大学, 法学部, 准教授 (30510995)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 民法 / 消費者法 / フランス法 / 不当条項規制 / 権利濫用 / 信義則 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度はまず、フランス契約法において「濫用(abus)」法理が現れる場面の代表例である濫用条項規制の一形態として、携帯電話利用契約における期間拘束条項をめぐるフランスの判例および立法による対応について分析した。具体的には、期間拘束条項が「濫用的」といえる場合はどのような場合なのかについて、特に判例をもとに抽出し、その「濫用」をどのような形で規制することが妥当かについて、フランス消費法典の期間拘束条項をめぐる特別規定の立法過程をもとに分析した。その結果、期間拘束が「濫用的」となりうる場合を導くことができたのみならず、期間拘束条項が消費者にとっては携帯電話の利用料金が安価になるという経済的効果もあることから、消費者にとっての経済効果を害さない形で「濫用」的な実務を規制する際のポイントについても導くことができた点で、公正な市場の確保と事業者の「濫用的」行為の規制とのバランスをとることの重要性を示す一例を提示することができた。 また、ネズミ講の「被害者」による不法原因給付の主張が信義則違反となる場合を示した日本の裁判例分析を通じ、悪徳商法の主催者のみならず悪徳商法の「加害者に近い被害者」の態様が信義則違反となるのはなぜか、その射程はいかなるものであるかを分析することにより、日本では権利濫用論と併せて分析されることが多い信義則の意義について検討することができた。 その他に、契約の解釈における裁判官の役割に関するフランスの議論の翻訳を通じ、契約の解釈における裁判官の役割についても、弱者保護や契約正義という観点から変化が見られることを示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2014年1月から2014年8月まで代表者は病気により休職していたこともあり、2014年度の最初の約半年間は研究に従事することがかなわなかった。復職後、休職前同様のペースで研究を再開したが、1年目の目標としていた事項をすべて行うには至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は以下の2点から契約法における「濫用」法理の意義を探求する予定である。 第1に、フランス消費法における「脆弱さの濫用」規定、および、フランス民法改正草案の中に存在する「経済的強迫」規定の分析を行い、契約当事者のいかなる行為が「濫用」的であると言えるのかについて、日本の強迫およびその拡張規定である消費者契約法4条3項の改正をめぐる議論への示唆を求めて検討する。フランス民法改正については2015年9月に現地でのヒアリングも行う予定である。 第2に、フランス契約法における条項の「濫用性」の意義について、この問題を分析した複数のフランス法の論文をもとに検討する。それによって、契約条項が「濫用的」であると言えるのはどのような場合なのかについて、契約当事者の権利・契約自由の原則との関係もふまえて一定の理論を提示し、日本の消費者契約法改正における不当条項リストの充実化、さらには事業者間契約における条項の不当性基準への示唆を導く。
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Causes of Carryover |
研究代表者が2014年8月まで病気により休職していたため、病気による延長が認められた別の研究課題(若手B)に従事しており、本研究課題に着手するのが大幅に遅れたことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2015年度は9月にフランスでの民法改正に関する調査を予定しているため、渡航費や通訳への謝金など多額の執行が予想される。また、研究代表者が復職して本格的に研究を再開しているため、購入が遅れた図書を今年度に大量に購入する予定である。
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[Book] Les notions fondamentales de droit civil : Regards croises franco-japonais2014
Author(s)
Denis Mazeaud, Mustapha Mekki, Naoki Kanayama, Katsumi Yoshida, Nathalie Blanc, Olivier Bustin, Philippe Chauvire, Andrey Colin, Megumi Hara, Shunichiro Koyanagi, Yves-Marie Laithier, Mathias Latina, Laurent Neyret, Nao Ogino, Aya Ohsawa, Ippei Ohsawa, Shintaro Osawa, Yves Picod, Yuki Saito, Kazuma Yamashiro
Total Pages
302(39-59)
Publisher
LGDJ