2016 Fiscal Year Research-status Report
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26380133
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
大澤 彩 法政大学, 法学部, 教授 (30510995)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 民法 / 消費者法 / 競争法 / フランス法 / 不当条項規制 / 強迫 / 不招請勧誘 / 権利濫用 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、昨年度に行ったフランス法における「脆弱性の濫用」論の分析をふまえ、契約当事者の「脆弱性」や契約当事者が置かれた状況を「濫用」する場面への立法的・解釈論的対応のあり方について具体的な検討を行った。 まず、契約締結過程における「濫用」的態様の具体例としては、契約当事者が合理的な判断ができない状況につけ込んで契約をさせる場合に当該契約を取り消すことはいかなる解釈論・立法論によって可能となるかという問いをたてて、民法の強迫規定の拡張可能性および消費者契約法における「困惑」類型の追加について分析した。その成果は2016年9月に中国・珠海で開催された中日民商法研究会大会にて報告した。さらに、そもそも契約当事者が合理的な判断ができない状況につけ込むこと自体を防ぐ究極的な方法として主張されることの多い不招請勧誘論についても、民法の強迫規定や取引的不法行為、暴利行為論をふまえた理論的分析を行い、学術雑誌にて公表した。 次に、契約内容規制における「濫用」論の具体例としては、昨年度に引き続き、日本の不当条項規制論の今後の課題について浮き彫りにするとともに、不当条項を設けた契約当事者に対する「制裁」という視点から、民事的効果のみならず行政法的手法による「濫用」の抑止可能性について分析して、学術雑誌にて公表した。 さらに、本研究課題が民法のみならず消費者法や競争法にも視野を広げた学際的なテーマであることから、今年度は消費者法に関する総括的分析も行った。その成果は、2016年11月に開催される「比較法国際アカデミー・第3回テーマ会議『Enforcement and Effectiveness of the law』」における消費法の実効性をめぐる各国法のレポート提出要請に対して、日本法のナショナルレポートを提出した。成果は2017年度に書籍の形で公表される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題は初年度である2014年度前半に研究代表者が病気で研究を中断していたため、全体的に遅れている。今年度は具体的な成果を昨年度以上に発表することができたが、それらは契約法における「濫用」法理の解釈論的・立法的可能性を模索する個別テーマ(不当条項規制、勧誘規制)についての単発の論文にとどまっており、「権利濫用」法理そのものを理論的に探究する本格的論文の公表には至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は昨年度に引き続き、「濫用」法理の解釈論的・立法論的可能性を具体的に模索する研究も継続する。具体的には、フランス民法改正における「経済的強迫」論、および「附合契約における濫用条項規制」論について分析・紹介する論文を執筆するとともに、日本法については、民法改正法案における定型約款論の分析を嚆矢として、約款が契約当事者による契約内容形成自由の「濫用」にあたりうる場合はどのような場合なのか、理論的な検討を加える。フランス法の分析にあたっては、文献の読解のみならず、複数回のフランスにおける現地の大学教授、消費者関係団体職員へのヒアリングも行う。
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Causes of Carryover |
本研究課題は初年度である2014年前半に研究代表者が病気による休職で研究を中断していたため、今年度に至るまで研究計画がずれ込んでいる。そのため、今年度も残金が生じてしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は6月にフランスでのヒアリング調査を予定しているため、そのための旅費に充当する。また、ヒアリングの成果をふまえた研究成果のとりまとめにあたって必要な文献の追加購入代金や公表論文の送付代金に充当する。
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Research Products
(5 results)