2016 Fiscal Year Research-status Report
現在日本の商品先物市場および商品先物取引法制の在り方をめぐる研究
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26380138
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
尾崎 安央 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (30139498)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 商品先物取引 / 綜合取引所構想 / シンガポール取引所 / 香港証券取引所 / アジアの市場規制 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初、本研究は、日本の市場の在り方を検討する上で、中国市場(上海・深せん・大連)韓国市場を対象にしていた。今なお上海や大連等の研究は重要であると考えるが、中国市場の調査過程で香港市場の重要性が認識され、2年目に急遽、香港の現地調査(取引所・業者などへの聞き取りと資料収集)を実施した。その際、アジア市場法制検討の対称軸としてさらにシンガポールの重要性が意識され、3年目の成果の取りまとめ時期にも拘わらず、急遽、シンガポールにまで研究範囲を拡げることにした。シンガポール取引所(SGX)においては、担当者から取引所の現状のみならず、現行法制に至る経緯や規制上の問題点など詳細な説明を受けたほか、多くの資料の提供を受けた。香港市場にしても、シンガポール市場にしても、いずれも単一の規制庁のもとで「総合取引所」的な性格を有する取引所が存在しており、日本市場の将来がグローバル市場であるとすれば、競争相手である両国の法制度の研究の重要性は高い。しかし、両国の証券・商品市場に関する法制度面からの研究は、日本では必ずしも十分でなく、邦語文献もほとんどない。シンガポールの場合、SGXのホームページが唯一の情報源といってよい状況であった。現地調査はその疑問点の解消のためでもあったが、同様のことは香港にも妥当した。実務面で、東京商品取引所がSGXと覚書を締結し、香港取引所がロンドンのLMEを傘下に入れるなど、その研究の重要性も高まっているにもかかわらず、こと法制度については基本的な理解すら十分でなく、まさに基盤研究として、両国の法制度の整理が重要であることを確認した。現時点では、収集した資料等の読み込みなどを行い、まずは香港・シンガポールの基本的な法制度等を紹介すべく、作業を続けている(成果の公表にはしばらく時間が必要である)。後の論説では「総合取引所」構想において検討すべき点などを明らかにしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定を変更し、日本の市場の在り方を検討するうえで、上海や大連ではなく、香港とシンガポールを対象としたため、事前準備と若干の齟齬を来したからである。しかし、この変更は、日本のライバル市場として最重要なものをターゲットにしたという点で適切であったと考える。また、当初の研究テーマ自体とは齟齬を来しておらず、比較対象の重点の置き方が変わっただけともいえ、本研究は継続可能と判断した。日本市場の在り方の検討という点では研究は進展しており、比較対象としての両国の位置づけができれば、一応の成果となると考える。もっとも、両国の法制度についての基本的な文献すら日本には十分にないのが実情であり、現地調達した膨大な資料等を読み込み、基礎的な情報提供を行うことも研究成果として重要であると考え、作業を続けている。
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Strategy for Future Research Activity |
完成年度を終えているので、可能な限り早い時期に、一定の成果物を公表したい。当面は、香港市場またはシンガポール市場の法制度の紹介を行うこととし、その成果物を踏まえて、当初の研究課題であった、日本の商品先物市場の在り方等の検討に係る論説を公表したいと考えている。いまだ資料的には十分でない部分があるが、香港の政府関係機関で得られた情報や国立シンガポール大学での資料調査過程で得られた文献情報等を参考にして、文献収集をも続けながら、当初計画で構想した成果物の公表を急ぎたい。
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Causes of Carryover |
3月にシンガポールでの調査過程で得られた文献情報をもとに、必要な書籍を購入するために次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
すでには発注済みであり、使用金額内での処理をする予定である。
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