2015 Fiscal Year Research-status Report
水取引制度に関する法理論の研究―水利権譲渡の理論とその運用
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26380139
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Research Institution | Soka University |
Principal Investigator |
宮崎 淳 創価大学, 法学部, 教授 (30267489)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 水利権 / 水の利用と管理 / 権利の観念化 / 権利譲渡 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度の研究成果は、水利権の譲渡を可能とする法理論について提示できた点である。かかる理論の提示は、水取引の法理論に関する研究の中核部分を占める。 水利権は、水の利用・管理の具体的事実を伴う、観念性が欠如した権利である。そのため、水利目的もしくは水の利用・管理の事実が消滅した場合または水源が枯渇した場合には、水利権も当然に滅失する。この点が、典型的な物権とは異なる水利権の特質である。水を利用・管理するためには、水利施設の設置管理が不可欠である。それゆえ、水利用に必要な水利施設を設置管理しているという事実が、それによって利用可能となった水を使用する権利の成立の論拠とされるのである。したがって水利権は、水を利用しうる状態に置くために必要とされる水利施設の設置管理を基礎として成立する権利なのである。 このように分析される水利権は、権利譲渡に関して抑制的に機能する性質をもつ。なぜなら、水の利用・管理の具体的事実を伴うことにより、観念性を欠いているからである。水利権の譲渡を可能にするためには、水の利用・管理の具体的事実から水利権を解放し、権利を観念化させる必要がある。 特定の目的のために必要な量と質の水を継続的、排他的に利用しうる権利である水利権を観念化することは、この権利内容から水利目的を除外することである。つまり、観念化された水利権とは、一定の水量を継続的、排他的に利用しうる権利と定義づけられる。水利権をこのように観念化することにより、その譲渡が可能となるのである。許可水利権ならば、水利使用規則に記載されている水利使用の内容から、取水量のみを利用権の対象として取り出したものが観念性を伴う水利権となる。 観念化された水利権の概念を析出することにより、それを譲渡する途が拓かれる。ここで提示された理論は、水利権の観念化によってその権利譲渡を可能とする法理論であるといえるのである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の主題である水利権譲渡の法理論の考察については、当該年度にその核心部分の研究成果をあげることができた。 一方、他大学との共同研究については、時間的制約の関係上、基礎調査をどのような方向に進展させることができるか検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、水取引の基盤となる水資源管理の法理論として、河川水と地下水を対比させ水循環基本法3条2項で定める水の公共性について主に考察した。平成27年度は、河川水の取引を可能にする水利権譲渡の法理論として、水利権の観念化について考究した。平成28年度は、これらの研究成果を統合することにより、地表水と地下水を一体的に取り扱うための制度構築に向けた法理論上の問題について研究する。
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Causes of Carryover |
本研究以外にも助成金申請が採択され、当該研究に充てる時間的制約が増加したため、使用計画を若干変更することになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は少額であるため、物品費(書籍代)や人件費に充てる予定である。そのため、使用計画に特段の変更はない。
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Research Products
(4 results)