2014 Fiscal Year Research-status Report
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26380140
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
釜田 薫子 同志社大学, 法学部, 教授 (50336822)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 株主の情報収集 / 株主の閲覧権 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、日本法における問題点を正確に把握するために、本研究で問題とする株主の情報収集の対象となる会計帳簿、議事録、報告書等の閲覧請求について、わが国の裁判例を調査した。特に、株主代表訴訟の提起に関連が深いと思われる取締役会議事録の閲覧謄写に関する裁判例を検討した。その結果、閲覧謄写請求が認められる要件に関して具体的な内容や判断基準を示した裁判例が複数見られた。それらの事例の中のリーディングケースといえる事例においては(東京地決平成18・2・10)、株主が閲覧謄写請求権を行使する際に必要とされる「権利行使の必要性」の要件について、検討し、「閲覧謄写が許可されない場合」や「閲覧謄写が許可される場合」について要件を示している。この考え方は、その後の裁判例において踏襲されている(佐賀地決平成20・12・26、大阪高決平成25・11・8)。このようにわが国の取締役会議事録の閲覧謄写請求については、平成18年決定の判示を踏襲するという一応の流れができてはいるが、裁判例の数がわずかである点で、十分に確立した基準とは言い難い。そこで、次に、米国法との比較ポイントを整理した上で、アメリカのデラウェア州の220条(株主の閲覧権)について、その成立、発展、関連する裁判例について整理し、平成27年度の下準備を行った。特に、閲覧請求が認められる前提となる株主の立証責任(株主が示すべき「閲覧目的の正当性)とその内容について示した複数の裁判例(州衡平法裁判所判決、州最高裁判決)を翻訳した。 神戸大学商事法研究会には合計2回出席し、米国法の裁判例について多くの助言を得た。監査役協会関西支部監査実務研究会との共同研究会でも実務のあり方を学んだ。また、当初計画にはなかったが、中央大学で開催された日本私法学会に出席し、会社法に関する最新の知識を得た(日本私法学会への出張費は、大学の個人研究費から支出した)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の計画はほぼ達成されている。日本法の裁判例の検討について、会計帳簿閲覧権や株主名簿閲覧権の行使に関するものについての検討が若干不足している(これは、取締役会議事録に関する閲覧権の行使の方が、本研究の中心となると判断し、先に時間を割いたため)ので、「当初計画以上に進展している」とまでは自己評価できない。しかし、日本法の若干の不足分については、平成27年度に検討したいと考えている。米国の条文や裁判例の検討が平成27年に計画していた分まで進んでいるため、全体としては順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度に予定されていた「わが国の裁判例の検討や研究会への出席を通じて見出した問題点について整理し、米国法との比較のポイントを決定すること」については、すでに平成26年度中に行っている。平成27年度は、平成26年度に行った米国のデラウェア州の裁判例についての下準備を踏まえて、より詳細な検討を行いたい。特に、株主代表訴訟の場面における株主の情報収集に関連する可能性の高い、「経営の失敗(mismanagement)を調査するため」という目的での閲覧請求は認められるのかどうかに焦点をあてて、裁判例を整理し、検討を試みたい。このような目的は、株主が「閲覧目的の正当性」を十分に示したと認められる可能性の高い目的のひとつとして、米国で確立されているものだからである。
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Causes of Carryover |
神戸大学商事法研究会への旅費を2回分計上していたものを使用しなかったためと、購入予定にしていた書籍(洋書)の出版が遅れることが年度末近くにわかったので、購入申し込みをキャンセルしたために、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度に使用しなかった旅費については次年度に使用する予定である。また、物品費についても、キャンセルした書籍が出版されたため、その購入のために使用する予定である。
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