2015 Fiscal Year Research-status Report
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26380140
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
釜田 薫子 同志社大学, 法学部, 教授 (50336822)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 株主の情報収集 / 株主の閲覧権 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、平成26年度にわが国の裁判例の調査および検討を通して把握した日本法における問題点をふまえ、米国法との比較検討を行った。米国法との比較は、本研究テーマに関連して豊富な議論の蓄積があるデラウェア州を中心に行った。 本研究テーマの重要部分である「株主の情報収集権」のひとつ、「株主の閲覧権」を定めたデラウェア州一般会社法220条について、その意義、成立過程、発展過程の整理と、重要判例の翻訳は平成26年度に下準備ができていたため、平成27年度は、220条についてその適用範囲や条文の文言の意味をさらに詳細に検討した。さらに、平成26年度に翻訳をすませていた重要裁判例が示した「信頼できる根拠基準」(原告株主の文書閲覧が認められるために必要な正当目的の存在の有無を判断するための基準)を適用した最近の複数の裁判例を検討した。裁判例の検討からは、「信頼できる根拠」があり正当目的が原告株主に認められる複数の重要な要素を導くことができた。また、原告株主の正当目的の主張に対しては、被告であり文書を所有している会社側から様々な反論が出されている。平成27年度はこのような被告側からの反論についても丁寧に分析を試みた。 神戸大学商事法研究会にも出席し、米国の裁判例について多くの助言を得ることができ、裁判例の分析に大きな助けとなった。 これらの検討を前提として、平成27年度は「デラウェア州における株主の閲覧権と正当目的の立証―「信頼できる根拠」基準の適用」同志社法学第67巻第6号(379号)143頁~173頁(2015年)を公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の計画はほぼ達成されている。平成26年度に行った日本法についての研究成果および米国法についての下準備をふまえて、平成27年度は株主の情報収集権のひとつである株主の閲覧権について裁判例(審査基準を示した重要裁判例およびその基準を適用した近年の複数の裁判例)を分析し、日本法への示唆をまとめるために必要な要素を見言い出すことができた。結果として、平成27年度の計画に沿った研究成果を論稿にまとめ、公表することができたため、「おおむね順調に進展している。」と自己点検による評価ができると考えている。予定していた平成28年度の研究のための下準備(デラウェア州の審査基準が影響を与えた州の裁判例の検討が十分にはできていないため、「当初の計画以上に進展している。」とまでは評価できない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、デラウェア州会社法220条が問題となった事例における審査基準が影響を与えた他の州の裁判例やデラウェア州と異なる審査基準を適用した州の裁判例を検討した上で、会社の文書の秘密保持という観点からの検討を行う予定である。会社に関連する情報の秘密保持という観点から米国法で重要とされるのは、「弁護士依頼者間通信秘匿特権」や、「弁護士活動成果秘匿の法理」などであるが、これらの特権や法理が株主の閲覧権の対象となる文書との関係でどのように適用されるのか(あるいはされないのか)といったことを中心に検討を行うことを考えている。
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Causes of Carryover |
購入予定としていた書籍(洋書)の出版が遅れたため、その分について次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度に使用しなかった金額については、次年度に書籍を購入するために使用する予定である。
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Research Products
(1 results)