2015 Fiscal Year Research-status Report
利益概念から剰余金概念への移行に対する会社法および税法の対応と展開
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26380143
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
三島 徹也 関西大学, 会計研究科, 教授 (70309342)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 繁隆 関西大学, 会計研究科, 准教授 (20581664)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 剰余金 / 利益 / 会社法 / 税法 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、利益・剰余金分配規制に関して、「ドイツ比較法的研究」および「現行会社法・税法上の研究」を行った。 「ドイツ比較法的研究」では、会社法においては、出資の払戻し禁止および利益配当規制について研究を行った。ドイツ株式法においては、出資の払戻しを明確に禁止する規定を有しており、さらに、利益配当規制についても歴史的に見れば緩和されているとはいえ、わが国よりも厳格な法制を有している。すなわち、わが国においては出資の払戻しを明確に禁止する規定を持たず、剰余金分配規制は緩やかなものとなってきているが、全く趣旨を異にするわけではなく、どのレベルまでの緩和が立法政策上優れているのかという議論に落ち着くことが分かった。このような会社法上の関係性に比べ、ドイツ税法上の比較において特筆すべきは、このような日独会社法に対応した税制の関係とはなっておらず、独自の税制法理論に基づいているということも検証した。 「現行会社法・税法上の研究」においては、平成17年会社法制定における議論、現行会社法の内容およびその解釈から、現在における資本制度消極論ひいては配当可能剰余金拡大論を中心に調査を行った。「資本」は債権者保護との関係で役割を果たしていないとする考え方を現行会社法は部分的には反映する内容となった。しかし、果たして資本制度そのものに意味はないのか、という点が焦点になる。わが国の会社法は、ドイツの株式法や有限会社法とは異なり、ほとんどの会社を占める株式会社を会社法ひとつで規制しており、その中には多様な株式会社が存在しており、会社によって資本制度の役割の大きさに違いがあることが調査の結果として分かった。また、この方向性に影響を受けるのが税法であって、会社法のこの流れに対して税法がどこまで会社法に依拠すべきかという点についても検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題は、交付申請書の記載のとおり、平成26年度から平成28年度までの3年間をその研究期間としている。そして、その2年目である平成27年度は、会社法および税法における剰余金法制に関して、「ドイツ比較法的研究」および「現行会社法・税法上の研究」を行うことを目的としていた。 「ドイツ比較法的研究」に関しては、ドイツ会社法および税法について、利益(剰余金)配当規制とそれに先立つ資本法制について調査を行い、わが国における法制との異同を明らかにすることができた。また、「現行会社法・税法上の研究」に関しては、特に平成17年会社法改正に際して明らかにされた資本制度および剰余金に関する会社・税法制の在り方について、先のドイツ法制との比較を参考にして検討を行い、資本制度および剰余金に関する会社法制の存在について一定の必要性があることを確認した。さらに、税法上においても会社法における考え方に依拠すべきであることを確認することができた。 以上のように、おおむね当初予定していた研究を行うことができている。また、最終年度である平成28年度に予定しているこれまで行ってきた研究(「歴史的研究」、「会計学的研究」、「ドイツ比較法学的研究」、「現行会社法・税法上の研究」)の有機的結合によって、「利益概念から剰余金概念への移行に対する会社法および税法の対応と展開」の総括を行うことへとつなげることができたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、最終年度となる平成28年度には、これまで行ってきた4つの研究(「歴史的研究」、「会計学的研究」、「ドイツ比較法学的研究」、「現行会社法・税法上の研究」)を有機的に結合させ総括をする。 研究の進行に伴って各部分の研究はリンクしてくることが十分に考えられるので、ここでは、遡って各部分の補足的な研究も同時に行う。そして、3年間の研究の成果として、本研究の目的である「利益概念から剰余金概念への移行に対する会社法および税法の対応と展開」を明らかにする。 すなわち、現在において剰余金法制に会社債権者保護の機能があるのか、機能があるとしてもその機能の割に剰余金法制存在のコストが大きいのではないか、会社債権者は自らを守るために本当に現行の剰余金法制を欲しているのか、またこの制度に問題があるとして代替する制度があるのか等について解明する。そして、これらの会社法に関する状況は税法ではどのように受け止められ、どのような方向性をとるべきであるのかという点について解明する。
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Causes of Carryover |
今年度においてはおおむね順調に研究は進行した。今年度の研究は、文献研究と外国における調査研究であったが、研究代表者および研究分担者ともに、本研究費以外の他の研究費から、文献を購入することができたこと、および外国における調査研究ができたことによって、その費用を大幅に抑えることができたことから、次年度使用額が生じた。また、次年度においては、ドイツその他のヨーロッパ諸国における法制度の最終確認を行う必要があることから、次年度はより多くの研究費が必要であると考えたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額となった84,940円は、上の理由でも示したように、次年度における外国を対象とした比較研究に上乗せして利用することを計画している。具体的には、ドイツその他のヨーロッパ諸国を対象とした大学を訪問し、かつその研究者との打ち合わせを行うことが必要となるためである。そして、平成28年度の研究においては総括を行うが、その際にこれまでの研究で足りなかった部分を補う必要があり、ドイツその他のヨーロッパ諸国における法制度の最終確認として、当該諸国の大学における調査およびインタビューが中心となるが、平成28年度の研究費は次年度使用額と合わせて、これらの調査を年間2回(8月および2月)実施するために利用する。その他、文献および資料整理、複写費に使用する予定である。
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Research Products
(2 results)