2015 Fiscal Year Research-status Report
民事手続におけるオンライン申立て・オンライン送達の実証的研究
Project/Area Number |
26380144
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
町村 泰貴 北海道大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (60199726)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | e-filing / オンライン申立て / 民事訴訟 / 電子送達 / デジタル・フォレンジック / フランス法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はポワチエ大学法学社会学部を拠点とし、フランスの民事訴訟手続を中心とする電子的情報システムの活用を研究した。 電子情報(デジタルデータ)や電子的媒体の証拠としての扱いに関しては、フランス民事訴訟において立法が先行しているものの、現実に問題となるのは刑事訴訟手続であり、特に捜査過程での証拠保全や捜索において電子情報の取扱いが様々に工夫されていることが明らかになった。 また、オンライン申し立てやe-filingに関しては、行政裁判所系列での電子情報システム活用についてポワチエ行政裁判所所長、判事および主任書記による実機を用いた説明を受けることができた。行政裁判では、民事裁判と異なり被告が行政庁や公的機関であり、電子送達なども含めたe-filingの普及が容易であることや、相当普及が進んだ段階での当事者サイド、すなわち弁護士の実際の対応や本音の感想を聞くことができた。これらは民事訴訟におけるe-filingの検討にも有益である。 刑事手続と電子的情報システムの活用では、デジタル・フォレンジックの利用や刑事捜査過程でのオンラインデータ捜索差押え、SNSなどを用いた捜査の可能性とその限界、GPS装置の利用と令状主義との関係などについて研究を重ねた。 この他、DV被害者救済と情報通信技術の利用、法廷の情報通信利用についても、特にヨーロッパでの関係国際学会、研究集会に参加し、情報収集と報告を行った。 これらの具体的な内容は、その一部を既に書籍(町村泰貴=白井幸夫編著『電子証拠の理論と実務』民事法研究会・2016)に公表した。また今年度は国際シンポジウムを開催して、そこで公表する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
フランスを拠点とする研究が一段落し、その一部の公表は済ませることができた。また、フランスのみならずヨーロッパ全体でのオンライン訴訟手続への期待と実践が進んでいること、判決手続に限らず訴訟前や判決執行、そして倒産などの局面でもオンライン技術が有用であること、さらには行政訴訟、刑事訴訟でのオンライン技術の利用が進んでいることと民事訴訟との比較検討などに進められたことは、計画を越える成果である。
|
Strategy for Future Research Activity |
フランスにおける実情と課題に関する研究結果を踏まえ、今後はこれとアメリカの状況との比較対象、および日本の実務との比較検討を行う。 日本の裁判実務では、正式な形でのオンライン申し立てやe-Filingは行われていないし、また法規定も十分整備されていないが、インフォーマルな形でのデジタル情報利用やネット経由の情報伝達が進んでいる。こうした現状に対して、諸外国の状況との比較対象による問題提起と必要な改善方向性を明らかにしたい。
|
Causes of Carryover |
当年度はフランスを拠点として研究をしていたため、日本国内における移動や研究協力を受けるための謝礼、謝金などが支出できなかった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、前年度出来なかった日本国内の情報収集整理、特に司法書士などの実情について調査を行い、専門知識の提供に対する謝礼や研究補助のための謝金に支出する予定である。
|
Research Products
(4 results)