2016 Fiscal Year Research-status Report
リベラルアーツ法学教育実践の原理と方法論に関する研究---人・社会・科学技術
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26380146
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
小谷 眞男 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 教授 (30234777)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 震災リスク裁判 / 福祉レジーム論 / 刑務所改革 / 調停 |
Outline of Annual Research Achievements |
リベラルアーツ法学教育の重要な柱のひとつである科学と法の関係を多種多様な専攻の学生に考えさせるトランス・サイエンス論教育の教材として独自に開発を進めてきた、イタリア震災リスク裁判についての研究を取りまとめ、2016年度末にイタリア近現代史研究会全国大会にて集大成的報告をおこなった。 福祉レジーム論もまた広く社会科学分野の学生・院生の基礎的な法学教育において不可欠のトピックスである。この分野では、外国人移民女性による家庭内ケア労働の増加がイタリアの福祉レジームをどのように変容させているかについての知見を取りまとめ、そこで問題となっているシチズンシップと基本的人権の問題に焦点を当てた論考を『世界の社会福祉年鑑2016』に発表した。 一般に刑罰の目的とは何か、行刑はどうあるべきかという問題、さらに精神障害者や高齢者による犯罪に対してどのような態度を取るべきかという問題も、学生に法の根本について考えさせるのに恰好のテーマである。この分野に関してはイタリアの刑務所改革について考える国際シンポジウムに参加し、イタリア人講演者の通訳を務め、その講演原稿の日本語訳を担当した。 2016年9月にはハワイ州における一般市民を対象とした紛争解決・調停セミナーに参加した。アメリカにおける社会人教育の一例として、紛争当事者へのアプローチの仕方や、調停技術の基礎などをどのように身につけてもらうかの一般市民法学教育実践例を参与観察した。 以上の研究実績は2017年度以降の「より良き市民社会のための法学教育」の実践に活用される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究会での報告、論考の発表、国際シンポジウムへの参加・役割分担、海外市民法学教育実践への参加など、着実な成果を挙げつつある。以上から、研究課題はおおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
イタリア震災リスク裁判に関していくつかの場所で発表してきた内容(論考、口頭発表など)を統合し、リベラルアーツ法学教育の教材という性格を強く意識した単行書の形で取りまとめる。 その他、今までの研究成果を国内外の学会報告ないし論文などの形で発表し、教育実践に反映させていく。
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Causes of Carryover |
海外での現地調査・資料収集をおこなう予定があったが、年度中に開催が決まった国内での国際シンポジウムに参加することによって当該調査の主要目的を果たすことができるという新たな事情が生じたため、当該調査等は次年度に延期した。このため、当該調査等に充当する予定だった費用のうちの一部に、予定外の剰余が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
海外での現地調査・資料収集、および関連する国際学会での報告などの費用に充当する予定である。
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Remarks |
2017年3月20日の日伊刑務所改革シンポジウム「ボラーテ刑務所の奇跡:ソーシャルファームを活用した社会復帰」(於:龍谷大学)に参加し、イタリア司法省社会内処遇局局長Lucia Castellano氏のイタリア語講演を逐語通訳した。2017年4月、氏の講演記録を日本語訳しウェブサイト“Synodos: academic journalism”に掲載した。
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