2016 Fiscal Year Research-status Report
医療技術の発展に対する司法の応答性と司法判断の政策形成への影響
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26380148
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
畑中 綾子 東京大学, 高齢社会総合研究機構, 客員研究員 (10436503)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 司法の役割 / 医療技術の発展 / 終末期医療 / 損害賠償 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、医療技術の発展に伴う個別の訴訟において、司法が政策的問題にいかに応答したかを扱う。医療技術には生殖補助医療や終末期医療など、日本の死生観や家族観といった重要な価値観につながる問題もある。行政や立法の裁量に対しどの時点で、どのような基準で判断したかを法解釈の中で検討し、司法判断のその後の政策形成への影響をみることで、司法の現代的役割を探ることを目的とするものである。訴訟提起が政策決定や社会の問題認識に先行し、その後の社会の判断に影響を与えることもある。司法は行政や立法の政策判断や裁量にどこまで踏み込むかのバランスが問題となる。平成位28年度においては、医療技術と訴訟との関係において、終末期医療や認知症高齢者による事故被害など高齢化社会に伴う問題について、訴訟の果たせる役割、一方で果たせない役割とはなにかを検討した。 例えば、認知症等により自らの意思を表明することが困難となった場合に、どのような医療を提供すべきかの医療同意の問題がある。成年後見制度では、後見人等に医療同意権を与えておらず、医療者、家族等の話し合いにより方針を決定することがガイドラインで示されている。この話し合いで出された結論については、司法も尊重するであろうと考えられている。しかしながら、医療者の中ではあとで殺人罪などの刑事責任が問題となるのではないかとの不安も根強い。司法が意思決定のプロセスに対する後ろ盾ともなるような方策の検討が必要となる。この点、比較法としてイギリス法を踏襲した香港では成年後見人もしくは裁判所に医療への同意権を与える点が興味深く考察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
香港大学での研究協力関係にあった若手研究者が10月に自己都合で退職したため、新たな研究協力を募るなどの必要があったため。
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Strategy for Future Research Activity |
医療事故調査制度が開始されて1年になり、行政処分や医療事故調査制度の運用により、医療訴訟の動向がどのように変化するかについての研究を行うことで、本研究の賠償訴訟分野に関する発展が見込まれる。
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Causes of Carryover |
国際共同研究加速基金での研究参加が可能となったことで、研究計画を行った三年前に行う予定であったアジアでの研究会参加が国際共同研究の枠内で可能となり、予定よりも低予算での研究実現が可能となったこと、研究遂行中に海外の研究協力者の変更が生じたために、計画の延長による練り直しが必要となったことがある。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
新たな研究協力者との研究遂行に係る調査研究費、それにかかる旅費、学会や研究会への参加費用に使用する計画である。
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Research Products
(4 results)