2015 Fiscal Year Research-status Report
インターネット環境の下での国際的名誉毀損事案の解決-国際裁判管轄と準拠法の検討-
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26380152
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
江泉 芳信 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (50103601)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 名誉毀損 / 「公表」 / シングル・パブリケーション / マルチプル・パブリケーション / 準拠法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度においては、国際的名誉毀損事案が主にイギリスとアメリカ合衆国との間において発生していることに鑑み、両国法のもとで公表(publication)の概念を検討した。 イギリスにおいては、伝統的にmultiple publication、合衆国においてはsingle publicationの考え方が採用されてきた。前者によれば、例えば書籍の出版による名誉毀損に対し、その書籍のpublicationは、国ごとに観念され、複数の名誉毀損が同時に発生し、それぞれにつき損害賠償義務が個別的に発生することになる。これに対し、後者によれば、書籍のpublicationは複数の国において行われたとしても、1回のpublicationと観念され、複数の国で発生した名誉毀損であっても、それは1つの名誉毀損とされて複数の国で生じた損害賠償義務を1つの準拠法で規律すると考えるのである。 この相違は、両国における「publication」概念の理解に由来するのではなかろうかとの前提で 両国における同概念がいかなるものであるかを検討した。 この検討は、国際取引法・国際私法研究会において発表し(2016年1月8日「インターネットによる名誉毀損における公表概念」)、この研究成果は、早稲田大学比較法研究所の「比較法学」50巻2号において公表する予定である。同号は2016年12月に発行される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イギリスを含むヨーロッパにおいては、EUの規則において一定の対応が進んでいる。イギリス自体も、法改正を経て、従来の姿勢を大幅に変更し、アメリカ法における対応に合致する形で進んでおり、グローバル・スタンダードの形成に向かって動いている。 この傾向をこれまでの研究の成果として跡づけることができていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
英米の法状況が概ね合致する方向にある中で、アジアの状況がいかなる方向を向いているのかを 検討する。 我が国は、英米における法状況と基本的に合致する状況にあると評価できるが、アジアの国々でこの問題についていかなる方向にあるのかを、資料の入手の困難さもあるが、できる限り明らかにしていこうと予定している。
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Causes of Carryover |
当初予定していた海外での調査が、面談予定の研究者の不在により実施できなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は、アジアの法状況を調査することに限定し、香港法を現地調査する。面談相手は 香港中文大学法律学院のGonzalo Villalta Puig教授を予定しており、日程を調整中である。
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